我が子の敏感すぎる反応をやわらげる“セルフ・レグ(自己調整法)”という提案

出産・子育て

2018/1/12

『「落ち着きがない」の正体』(スチュアート・シャンカー:著、小佐田愛子:訳/東洋館出版社)

「じっとしていられない」「集団に馴染めない」「すぐにかんしゃくを起こす」「手に負えない」「問題児」etc.大人から見て、そのように見えてしまう子どもは決して少なくない。このレビューを読まれている方の中にも、小学校の通知表に「落ち着きがない」と書かれた記憶がある人もいるのではないだろうか。

 だが、本書『「落ち着きがない」の正体』(スチュアート・シャンカー:著、小佐田愛子:訳/東洋館出版社)は、そんな子どもたちや大人に対する一方的な見方を変えてくれる。

 子どもの発達に関する研究の仕事を通して、カナダやアメリカをはじめ世界中で数千、数万人の子どもたちと出会ってきたという著者は、本書の冒頭で「その中に悪い子はひとりもいなかった」という。そして、落ち着きがない子どもの反応についてこう解説する。

『自分の内部や周囲で起こっているすべてのこと——音や雑音、気を散らすもの、情動など——に、「場に応じて」対応する能力が欠如していることの現われだ』と。

 つまり、過度のストレスによってエネルギーが不足し、気分がハイテンションになっているために、ちょっとしたことでも過敏に反応してしまっている、というわけだ。

 こうした過敏なストレス反応が、周りとはちょっと違う行動をしてしまう子どもたちの脳内で起きている。それゆえ、そんな子どもに対して「頑張れ!」「静かにしなさい!」などといくら言い続けても意味がない。

 なぜなら、それはセルフ・コントロール(自制心・自己制御)に期待しているから。

 著者によると、すでにストレスフルな状態なのに「頑張れ!」とか「我慢しなさい」などとセルフ・コントロールを強要すればするほど、人はポジティブな行動変化を成し遂げにくくなるという。それは脳内反応であって、精神論や道徳論でどうにかなる問題ではないというわけだ。

 そこで大切になってくるのが、本書のメインテーマである「セルフ・レギュレーション(自己調整)」という新たな視点だ。この一般に馴染みのない「セルフ・レグ」について、著者は「自己調整法」であるとし、自己制御との違いについて次のような説明をしている。

 自己制御は、衝動を抑えること。それに対して、セルフ・レグは、衝動の原因を認識し、それを弱め、そして必要なときには衝動に対抗するエネルギーを持つことである、と。

 ようするに、親や教師が「問題行動」をしてしまう子どもを抑えつけようとするのではなく、その子が落ち着けるような気づきを与えることによって自己認識を深め、健康な精神状態に至るための自己調整法がセルフ・レグなのだ。

 さらに、大人たちが子どものセルフ・レグをサポートするためのステップとして、著者は次の5つを挙げている。

1.サインを読み取り、行動をリフレーミングする。
2.ストレス要因を見きわめる。
3.ストレスを減らす。
4.子ども自身が自分と向き合い、ストレス過剰になっていることに気づかせる。
5.子どもと共に、どうすれば困難な状況から脱せられるか、落ち着いていられる手段を見出していく。

 ポイントは、子ども自身が緊張から解放される方法を知る(認識する)ことで、脳科学に基づいた子どもへの理解と触れ合いがストレスサイクルを断つ、というわけである。

 本書の中では、脳がストレス因子にどう反応するか、落ち着きがないとき脳はどのような指令を出しているのか等々の解説をしたうえで、親と子は間脳でつながっていて親のストレス値が高いと子どもの間脳のストレス調整機能が混乱することや、ストレスは「生物学的」「情動」「認知的」「社会的」「内社会的」の5つの領域に分かれていることを踏まえ、それぞれの領域に応じたセルフ・レグへの具体的な道のりなども示している。

 また、ストレスを減らす方法として、深い腹式呼吸やマインドフルネスについても触れ、子どもたちがマインドフルネスをマスターできるように導く手順なども紹介している。

 一方で、「万人共通のリラックス法はない」とし、とりわけ、さまざまな刺激に対して敏感な思春期の子どもたちの問題も取り上げ、マスメディアのネガティブな影響や激しい競争、ゲームやジャンクフードなどの超刺激物がストレスを緩和することを妨げている現状に対する懸念も示している。

 ユニセフ「乳幼児期の子どもの発達(ECD)協議会」の委員長も務めていたという著者だけに、本書の全体を通じて、ストレスフルな環境下に置かれている子どもたちへの深い理解の眼差しと、科学的な知見に裏うちされた知的な愛情が感じられる。

 最終章では、本書のまとめとして「子どものサインに気づき、セルフ・レグの習慣を育てる12の方法」が紹介されており、これは子どもに関わるすべての大人にとって多くの気づきを与えてくれる内容で、人間理解のためのエッセンスでもあるようだ。

文=小笠原英晃