家族に「家で死にたい」と言われたら、どうする? 大切な人を自宅で看取ろうと決めたら読みたい1冊

暮らし

更新日:2018/1/31

『家族を家で看取る本』(主婦の友社刊・村松静子監修/主婦の友社)

 病院で亡くなる人の割合は8割。けれども、自宅で最期を迎えたい人は6割という統計があります。
 死期が近づいた家族から、「(入院先から)家に帰りたい」「家で死にたい」と言われたら、あなたはどうしますか。

 戸惑う人も少なくないでしょう。「家じゃ何もできない」「病院のほうが安心なのに」などと思うかもしれません。一方で、できることなら叶えたいとも思うでしょう。
「家で死にたい」と言われたら、まず、すべきことは、なぜ病院ではなく「家」で死にたいのかを、本人に聞くことです。「苦労して建てた家だから」「長男で、代々受け継いできた家だから」「死ぬまで好きなお酒を飲みたいから」「妻の手料理を食べたいから」「家族の気配を感じる場所にいたいから」……、その人なりの理由が必ずあるものです。家での看取りにはたくさんのハードルがありますが、理由を聞いて、「ああ、そうなんだ」と納得できれば、最後までやり抜く原動力になります。

 家での看取りには、覚悟が必要です。死を目前にした本人は、心が揺らいだとしても、いつの間にか覚悟していくものです。問題は、家族の覚悟。大事な人の死を受け入れられず、右往左往するのは、たいてい家族です。だからこそ、なぜ「家」なのかを知ることが大切です。

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■家で死にたいけど、遠慮して言い出せない人もいる

 最期は家で、と思っていても、遠慮して言い出せない家族もいます。とくに女性の場合、夫に先立たれると、子どもに「家で死にたい」と言えない傾向が少なからずあります。「子どもに迷惑をかけたくない」という声を多く聞きます。でも、本当に家で死にたいと思っているなら、その想いを家族は知っておきたいし、できることなら叶えたいものです。本人の気持ちを知るには、たとえばエンディングノートを書いてもらうと、話し合うきっかけになるでしょう。

「迷惑かけたくない」という心の内は……

■ところで、「家で死ぬ」って、どういうこと?

 その昔、日本人は、住み慣れたわが家で亡くなるのが一般的でした。団塊の世代の人は、おじいさん、おばあさんが家で亡くなる光景が記憶にあるかもしれません。いま、家で死ぬというのは、「最期まで生き抜く」ことです。病院に任せっぱなしにしない。何時に起きて、何を食べて、何を着て、何をして過ごすのか、どう生きるのかを最期まで、自分で決めていくことです。
 本人の「最期まで生き抜く」覚悟を、家族は見守り、必要なサポートをします。

その昔、日本人は、住み慣れたわが家で亡くなるのが一般的でした。

■家での看取り。キーパーソンは訪問看護師

 家での看取りを支えるキーパーソンとなるのが、訪問看護師です。病状に合わせた看護、療養生活の世話、介護支援や相談、そして終末期ケアを行ってくれます。医師に聞きづらいことも、訪問看護師が橋渡し役になってくれることもあります。死期が近づき、家族が動揺したときでも、寄り添って、的確な判断と心配りをしてくれるでしょう。信頼できる訪問看護師の探し方、依頼の仕方、緊急時の対応なども、本書が参考になります。

医師に聞きづらいことは、看護師に橋渡し役になってもらいましょう。

1章「家で逝きたい」と言われたら、まずすべきこと
2章 ふだんから考えておきたいこと
3章 看取りにかかるお金
4章 在宅で受けられる医療
5章 最期のときはこう迎える

『「家で逝きたい」と言われたら、することチャート』では、順を追って何をしていけばいいのかが具体的にわかります。看取りに関する費用を抑えるさまざまなサービス、家族が家で行う医療の種類、痛みを取るケアの仕方、最期の日が近づくサインなど、知りたいことが満載です。

 家での看取りにはいくつものハードルがありますが、たくさんの情報から自分に合ったものをチョイスしていけば、決してできないことではありません。ひとりで抱え込まず、さまざまな制度を使いスタッフに入ってもらうことで、大事な人の希望を叶えたいものです。