初めて産んだ我が子の魅力にメロメロ 惜しみない愛を注ぐひたむきな母の激アツ育児記録!

出産・子育て

更新日:2018/2/19

 SNSでの情報発信が、話題となる昨今。『娘が可愛すぎるんじゃ〜!』(きくまき/KADOKAWA)も、そんなTwitter発信から生まれた“笑って、萌えて、元気が湧く”溺愛系育児マンガ。母である著者・きくまきさんの娘への熱烈な傾倒ぶりが、生後1歳8カ月に至るまでのエピソードとともに、観察記録風に描かれている。

 一体、どれほどはじけた内容かと思いきや、物語は出産前の体調の変化の回顧録からスタート。電車に乗っていると急に目の前が白くかすみ、そのうち吐き気に襲われる様子に「これが身籠もるということか」と神妙な気分で見入ってしまう。

 そして、いよいよ陣痛の気配に見舞われて、病院へ。だんだん強まってくる痛みに冷静に対処しながら、身を委ねつつ出産していく。その迫力ある赤裸々すぎるほどの描写に、読んでいるほうもつい、真剣な気持ちに…。

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 しかし、あくまでポジティブモード全開で、我が子を産み出そうとする姿は、出産を控えた女性にとって、大きな励ましとなるに違いない。

 出産後の想像を絶する痛みと処置方法もリアルに描かれ、個人差はあるものの、子どもを産むことがどれだけ大変かがヒシヒシ伝わってくる。

 そうやって産まれた我が子は、まさに目に入れても痛くない可愛さ。ぷくぷくしたほっぺたがチャームポイントだが、顔のパーツうんぬんというよりも、とにかく“我が子というものは存在自体が理屈抜きで可愛い”というのが、このマンガのいわんとするところ。

 妊娠当初から我が子誕生を待ち望み、育児に協力的な夫の溺愛ぶりもあいまって、理想的とも言える子育て環境に恵まれているのも素敵だ。女性から見て、こんなに理解のある夫なら、どんなに子育てがしやすいだろうとうらやましくなるほど。

 単に娘を見つめているだけで、ちょっとしたことに反応しただけで、最高に幸せな気分になる著者。授乳中、産後に張った胸に激痛が走ったり、せっかく作った離乳食を噴水のごとく吐き出されたり、ハイハイし始めたと思えば、その危うさに目が離せない毎日に突入していく。けれど、どれだけ振り回されても、世話をすることがまったく苦にならない——。

 そんな日々の奮闘と我が子の1カ月ごとの成長の様子が描かれていて、読めども読めども、母の娘への愛はとどまることを知らない。

 家の中での出来事、野外での出来事、夫も交えた出来事など、娘が無邪気にほほえんでくれたり、少しずつ物事を覚えるたび、心から最大限に感動する著者。そんなきくまきさんのほうに、むしろ感動してしまいそうだ。なかでも、親としての感動がピークに達するのが、娘が言葉を発したとき。

 もちろん、子育ては綺麗事ばかりではなく、時には不測の事態にだって陥る。娘が感染したノロウイルスに自分たち夫婦も感染し、苦しみ抜いたエピソードや、気づかぬうちに娘がかかった手足口病など、小さな子供を持つことと、自らが健康でいることの責任について考えさせられてしまう。

 最後の章の「可愛すぎる娘ととりえのない母」のくだりでは、著者の本音が、揺れる心模様となってグッと胸に迫る。それまでと同じ調子で読んでいたら、ふいを突かれてジワっと涙がにじんでしまった。

 子どもへの虐待が問題になっている世の中だけに、すべての子どもが、こんなふうに思いっきり愛されるなら、どれほど幸せな社会になるだろう。

 化粧っ気もなく、おしゃれもせず、自分のことなど二の次で、母性全開で娘を溺愛する著者。なりふりかまわず、ひたむきにまっすぐに生きている姿は、母ならではの強さと美しさに満ちている。

 子どもを持つ道を選ばなかった人にも、これから親になる人にも、子育ては生半可なものではないけれど、それでも「子どもを持つって、なんて素晴らしいことなんだろう」と教えてくれる、愛情いっぱいの育児記録マンガ。惜しみない愛を貫く底抜けのポジティブパワーを、これでもかというほど感じられるだろう。

文=星野ユリカ