ただただ尊い!? 2.5次元舞台にハマった男子大学生の活動記録

マンガ

更新日:2018/2/19

『俺の推しが世界一輝いている ~2.5次元舞台おっかけ男子の活動記録~』(缶爪さわ/KADOKAWA)

 愛するキャラクターが現実世界に出てきてくれたら——。ヲタクなら、誰でも一度は考えたことがあるはず。近年、そんな願望を満たしてくれる、2.5次元舞台が人気となり、公演数を増やし続けている。2.5次元は、アニメや漫画のキャラクターを生(?)で見られる喜びと、俳優さんを生で見られる喜びがWで味わえるという、とってもおいしいジャンルなのだ。「○巻のあのシーンだ…!」と思い入れのあるシーンが俳優さんによって見事に演じられた瞬間なんかは、「生きててよかった…!」とさえ感じる。

『俺の推しが世界一輝いている ~2.5次元舞台おっかけ男子の活動記録~』(缶爪さわ/KADOKAWA)の主人公・千明も、そんな2.5次元の世界に大ハマりしてしまった男子大学生のひとり。舞台を観に来るファンが女子ばかりだったり、チケットがなかなか取れなかったり、公演に通うための資金稼ぎでバイト詰めだったりと何かと大変だが、それでも千明は2.5次元が大好きなのだ。

 千明は、俳優・天真に魅せられ、彼の出る舞台に通い詰めている。千明によると、天真の演技は「ひとりのキャラクターの物語」を感じさせてくれる表現力の高さが魅力なのだという。漫画では描き切れない、スポットライトの当たっていない時のキャラクターの微妙な表情や感情も、舞台なら見届けることができるのだ。そんな大役を務めてくれる俳優さん、そんなチャンスをくれる2.5次元という存在は、ファンにとって、ただただ尊い。

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 そして本書を読んでいると、ファンにも種類があるのだということも知ることができる。千明のように、恐れ多くて接触イベントに行けない、認知されたくない派もいれば、千明の舞台仲間・黒井もなのように積極的に接触イベントに行って交流したい派もいる。どちらの愛が強いとかそういうことではなく、それぞれ強く想っている故の結論として、そうあるのだ。

 また、本書では、俳優サイドの生活や思いも描かれている。千明が憧れ崇拝している天真は、ふわっとした雰囲気とは裏腹にかなりの努力家で、台本にも原作漫画にも付箋がびっしりと貼られている。「見てくれる人がいるから」「24時間キャラクターのこと考えても足りない」と、ファンの思いに応えようと必死で頑張っているのだ。その誠実なひたむきさがあるからこそ、人の心を掴み、ファンの心に刺さる演技ができるのだろう。もちろん、天真だけでなくその他の仲間たちも、それぞれに信念を持って舞台に挑んでいる。

 俳優さんたちはファンのことを思い、キャラクターのことを思って必死に練習し、ファンはお金を払ってそれを見届ける。舞台という、演者とファンの距離が近い場所だからこそ、結びつきはより強固なものになっていく。そしてまた会いたいと、頑張って会いに行く。

 本書を読んでいると、そんな根本的なことを改めて考えさせられる。そして、やっぱり何かに熱心になるっていいなあ、とうれしくなる。2.5次元舞台に行ったことがない人もこの本を読んで少しでも気になったら、まずは好きな作品の舞台化を探し、足を運んでみることをオススメしたい。

文=月乃雫