日本から北欧へ。懐かしさと情緒、名画を辿る物語

小説・エッセイ

更新日:2012/3/6

ソフィアの秋 【五木寛之ノベリスク】

ハード : PC/iPhone/iPad 発売元 : 講談社
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:電子文庫パブリ
著者名:五木寛之 価格:87円

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もったいない。残酷すぎる! あぁ、本当にもったいない…。もったいない…。この作品はこのひと言につきます。

主人公は批評家気取りの美大生。彼はある日、同郷の友人からなんとも怪しげな噂を聞きつけます。それは「ブルガリアのある村で、聖像画の名画が大量に打ち捨てられているのを見た―――」というもの。これを聞いた主人公は、自らの審美眼を頼りにして、ひと山当てるべく現地へと赴くのですが…。

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と、絵の世界に片足を突っ込む端くれとしては、実に心躍るお話です。なんてうらやましい!こんな話を聞いた日には、主人公の“ぼく”よろしく、一目散に駆け出すことでしょう。美しい美術作品、どこか懐かしいような北欧の山村風景。さらに作品の性質上、美術に関するウンチクや、教養も身につくというお得さも良い感じではないでしょうか。

しかし…、大変残念なことに…、この作品は思った以上に…、残酷だと言わざるを得ません…。
物語は後半。絵を手に入れた一行は、帰路の雪山で、悪天候により立ち往生してしまいます。ごうごう吹きすさぶ雪、下がる気温と体温。身につけるありったけの物を燃やして命を繋ぐのですが、やがてそれも尽き果て…。ついに…。…あぁ! ここに改めて書き起こすことすら辛い!

そうつまり、結局、命惜しさに、名画で暖を取りやがるのです。
いや、わかります。そうしなければ、おそらく風前の灯が、フ-ッとあっけなく立ち消えてしまうのはわかります。
しかし…、あぁ、もったいない。

欲に眼の眩んだ美大生崩れではなく、この私を連れて行ってくだされば、腕の二、三本(いや五、六本!)くらい火にくべて差し上げたのにっ!

「山を甘く見るな」
“13人目のクーリエ”はきっとそう言うに違いありません。
山の天気は非常に変わりやすいですから、皆さんも美術品の輸送で雪山へ行く際は、くれぐれもご注意くださいますように。


見ているだけでヨダレが…くれ!

ヤメロォォォォォォ!!

横文字でもヨダレは出ます