ある日、人生が崩壊しました。もし自分の家族が犯罪に手を染めたら…

社会

2018/2/17

『息子が人を殺しました 加害者家族の真実(幻冬舎新書)』(阿部恭子/幻冬舎)

 最近は凶悪犯罪が増えた…そんな風に感じているだろうか。データを見ると、実際はその逆であることがわかる。警視庁が平成28年7月に発表した「平成26年、27年の犯罪情勢」によれば、刑法犯認知件数は昭和48年を底に平成14年で過去最多となる。特に平成8年以降は増加傾向で戦後最多を更新し続け、平成14年には285万件を超えた。その後は13年連続減少し、平成27年には前年比11万3794件減の、109万8969件で戦後最少であった。インターネットの普及などにより、私たちは以前より多くの情報に触れることができるようになった。凶悪事件についても犯人のひととなり、事件を起こした背景などについても、ネットで検索すればさまざまなことを知ることができる。そして時として、出てはいけない情報、知られてはならない情報さえも、ネット上に散らばっている。

『息子が人を殺しました 加害者家族の真実(幻冬舎新書)』(阿部恭子/幻冬舎)は、日本で初めて加害者家族支援のNPO法人「World Open Heart」を立ち上げた著者が、その活動を通して見聞きしたことや感じたこと、その実態について赤裸々に語った“戦い”と“煩悶”の記録だ。

住んでいた部屋を追い出される

 ニュースを見ていると加害者の自宅がテレビに映っていることがよくある。近所の人が見れば一目瞭然だ。夫が近所の家電量販店で窃盗をして逮捕された専業主婦の真由美さんは、夫の起こした事件を大家に知られ、借りていたアパートからの退去を余儀なくされる。

 昼間に現れた報道陣は、真由美が留守を装っていたことから、アパートの101号室から順番にチャイムを押していき、部屋を特定しようとしていたようだった。(中略)
 翌日、外に出ると、ドアに「犯人の家ココです。」という紙が貼ってあった。郵便受けには、「ふざけんな泥棒」「出ていけ」「死ね」と書かれた紙が投げ込まれていた。真由美は恐ろしくなり、引っ越しを決意した。

遅れる日本の加害者家族支援

 欧米諸国では、加害者家族へのケアは非常に重要視されている。なぜなら、ケアされずに放置された結果、加害者家族が反社会的行動に出る事例が確認されているからだ。2012年、日本における加害者家族支援の調査の目的でトヨタ財団から活動資金が助成された。また、2015年には韓国ソウルで加害者家族の支援団体が設立されるなど、アジアにおいても支援の輪は広がってきているものの、まだまだ充分ではない。著者はいう。

 事件後、加害者家族を排除するのではなく、加害者家族にしかできない役割を全うできるように導くのが、社会の責任ではないだろうか。

 日本は世界でも非常に治安のよい国として知られている。そのことが犯罪者に対して厳しく、さらに加害者家族に対する偏見の強さにも繋がっていると著者は考える。加害者家族をケアすることが、ひいては被害者をケアすることにも通じる、そんな意識が定着するには、この国ではもうしばらく時間がかかりそうだ。

文=銀 璃子