「ボカロP」って覚えてる? 久しぶりにボカロが聴きたくなっちゃうコミックエッセイ

アニメ・マンガ

2018/3/4

『ボカロPで生きていく 40mPのボーカロイド活動日誌』(40mP:原著、たま:著/KADOKAWA)

「ボカロP」。なんとなく聞いたことはあるけれど、いまいちピンと来ないこの言葉。一体どういう意味? 答えは、音声合成ソフト「VOCALOID」を使って創作活動を行う人のこと。つまり「VOCALOID」の「P=プロデューサー」というわけだ。

 5年ほど前、当時中学生だった妹が彼らの曲をとても熱心に聴いていたので、なんとなく一緒に聞いていた筆者。しかし「なんか、ニコニコ動画で……」「アマチュアなんだけど本格的で……」「再生数とかすごくて……」くらいのふわっとした知識しかなかった。

 妹と離れて暮らすようになり、あまりボカロ曲を聞かなくなった今。もしかして、勢いに陰りが見えてきているのかなと思っていた。しかし実際は、たしかに全盛期よりは落ち着いたものの、いまだ根強い人気を誇っているらしい。しかも、最近話題のアーティスト米津玄師もボカロPとして活動していたというではないか! 同様に、ニコニコ動画から人気に火がつき、CDのリリースはもちろん、自身もアーティストとしてメジャーデビューを果たすボカロPもいるのだという。


 そんなボカロPたちはどのように創作活動に勤しみ、どのような生活をしているのか。それをつまびらかにしてくれるのがコミックエッセイ『ボカロPで生きていく』だ。

 原作者の40mp氏は、2008年ごろから活動を始めたボカロP。「正統派ポップス」と評されるような、幅広い層に受け入れられ、歌いやすい曲で人気を博し、2010年には自身のボカロ楽曲をまとめたアルバムでメジャーデビュー。2015年からは「イナメトオル」名義でシンガーソングライターとしても活躍している。

 本書は、40mp氏がボカロPとして活動を始めたころから、日本青年館で「虹色オーケストラ」というコンサートを行うまでの、約4年間の軌跡をまとめたもので、4コマ漫画で構成されている。

 マンガの作画を担当したのは、40mp氏の多くの楽曲でイラストを担当してきた、たま氏。デフォルメされたキャラクターはかわいらしく、テンポよく話が展開していくのでサクサクと読み進めることができる。

 気になるその内容は、ボカロPや全盛期のニコニコ動画界隈に関して、「へえー!」「 なるほど!」と膝を打つような豆知識がたっぷりつまっている。たとえば、ボカロPの名前は、視聴者が名付けることが多かったというのも初めて知る事実だった。ちなみに40mp氏の名前は、初投稿した動画に書かれた初音ミクが40m級の巨人に見えたことに由来するのだとか。

 ただ、本書を読んで筆者の中に色濃く残ったのは「ボカロPは”ものすごくクリエイター”なんだな」という思いだ。趣味の延長線上であったはずの創作活動に本気で取り組み、納得いくものができるまで何度も何度も手直しを加えていく40mp氏。そしてそんな彼にとことん付き合う周りの仲間たち。しかも本書に描かれている期間は、会社員を続けていたというのだから、「音楽が好き」という純粋で強い気持ちがなければとても続かなかっただろう。

 本書を読み終わったあと、久しぶりにボカロ曲を聴いてみた。VOCALOID特有の肉声と機械の中間のような歌声はなんだか惹き込まれるなーと。40mp氏はもちろん、現在でも新旧問わず、多くのボカロPたちの思いのこもった楽曲を投稿していた。今さらなのかもしれないが、ボカロ曲にハマってしまいそうだ。

文=近藤世菜