銀行マンや金融業界への就活生必読! 変わりゆく銀行の姿と未来への展望

ビジネス

2018/3/7

『AI化する銀行』(長谷川貴博/幻冬舎)

 AI=人工知能という言葉が広く使われるようになり、とても身近なものとして扱われている。スマートフォンやテレビ、スピーカーといった家電製品にさえ、AIが搭載されるものが登場しているほどだ。これは日常生活の話だけに留まらない。ビジネスの世界においても、AIの導入は避けられないものだろう。中でも、劇的な変化を経験しているのが、銀行である。AIという新技術の登場が、銀行で働く人々に与える影響は、決して無視できるものではない。

「2000年には600人いたトレーダーが2016年には2人になってしまった」という、ゴールドマン・サックスでの衝撃的な出来事から、本書は始まっている。『AI化する銀行』(長谷川貴博/幻冬舎)では、銀行における業務とAIの親和性が非常に高いことが強く語られているが、その象徴の1つだからである。トレーダーの仕事がAIに置き換わる。そうした現実を示しながらも、著者は「銀行で働く人々の仕事が失われるわけではない」という。

 AIの進歩は目覚ましいものがあり、日進月歩で実行可能なことが増えている。特に情報の収集や分析という分野においては、既に人間の手では決して追いつけない領域に達している状況だ。例えば、1000分の1秒単位でトレードを繰り返すことによって、小さな利益を無数に重ねるという取引方法が存在している。これは、人間の能力では不可能な、AIだから実践できる手法だ。リスクが小さい代わりに、利益の薄い取引であっても、それを数百万回と重ねていけば大きな収益に繋がる。AIの導入が与えた、新しい取引の形が既に存在しているということだ。

 だが人間に不可能な業務だけが、AI導入の対象になるわけではない。電話オペレーターや窓口業務など、これまで人の手によって担われてきた仕事も、AIに置き換わることが予測されるという。銀行における接客は、感動を与えるようなものではなく、むしろ効率的に進めることが重要だからだ。合理的判断に長けているAIであれば、利用者を待たせることなく対応できるだろうと著者は語る。

 だからこそ、銀行はAI化を急いでいるし、急がなければいけない。しかし、日本は欧米に比べて、AI導入への取り組みが遅れているのも現実である。銀行業務をAIの手に委ねることが、従業員の仕事を奪うことになるという懸念があるからだという。だが、本書では、その認識は間違いだとしている。なぜなら、そこに新しい仕事が生まれるからだ。今の仕事をAIが担うようになっても、別の仕事に割り当てられるだけであり、銀行員が不要になることはない。

 そもそも、現状の銀行は慢性的な人手不足であると著者は述べている。窓口で多くの人が自分の順番を待っている姿はごく普通であり、そこから見える銀行員はせわしなく働いている。一時期、電話オペレーターを海外にアウトソーシングしたものの、日本語がおぼつかないために撤退したことさえあった。さらに支店の統廃合なども進み、今の銀行員は過重な負担を背負っている場合も少なくない。

 銀行がAIを導入するというのは、そうした人手不足を解消する手段としても、歓迎されるべきだ。AIによって代替される業務の担い手が、別の仕事で活躍するようになれば、銀行は利用者にとってもっと便利な存在になれる。ここで大切なのは、AIが自分に置き換わるものではなく、「便利なツールの1つである」と考えることだ。

 本書の内容において、最も重要なテーマである「銀行員の未来像」として、AIを上手に利用できる能力を得ることが語られている。AI化の波に逆らうことは既に不可能であり、ここで立ち止まることは、日本の金融システムが海外資本に取り返しのつかない後れを取る可能性さえあるからだ。しかし逆に言えば、AIに長けた人材は銀行にとって不可欠な存在になるという意味でもある。本書の最後の締めくくりには、「まずはAIを使ってみることが大事だ」と述べられている。

「自分には無理だ」などと考えず、実践してみることから始めれば、得られるものは少なくない。AI化という時代の流れを知り、自分の新しい可能性を探すための手がかりとして、将来の銀行で働く人間を目指す人にはぜひ手に取っていただきたい1冊だ。

文=方山敏彦