知って得する! 努力を続けられる人の条件

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公開日:2018/3/14

『「一瞬で決断できる」シンプル思考』(遠藤保仁/KADOKAWA)

 サッカー日本代表の国際Aマッチ出場数最多記録保持者である遠藤保仁選手、新刊の『「一瞬で決断できる」シンプル思考』では、「先を読む力」の大切さについて語っていた。そんな中、遠藤選手は未来をつくるために「目の前のことだけに集中する」ことが大事だとも言っており、スケジュールチェックなどはほとんどしないとか……。一見、「先を読む力」とは真逆の考え方のように感じるが、一体どういうことなのか聞いてみた。

■目の前のことに集中する。その積み重ねでしか結果は生まれない

 あまり先のことをあれこれ考えるのは好きではありません。まだ起きてもいないことを「こうなったら、どうしよう」と心配してもしかたがないし、ストレスに感じるだけです。だから、スケジュール帳もあまりチェックすることはありません。もちろん、試合から逆算してトレーニングの予定を立てることはしますが、プライベートの予定は案外いい加減です。前日の夜に、「明日はどんな予定だったっけ?」と確認する程度。

 僕は、「目の前のことに全力を尽くす」ことを基本スタンスにしています。

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 試合のときはもちろん、その試合のことだけに集中する。これから試合が続いて体力的につらいから少し手を抜こうなんて考えることは絶対にしません。勝利をめざすならば、今できることに全力を尽くすしかないのです。練習も同じで、目の前の練習に集中する。その積み重ねでしか、サッカーはうまくならないから。

 僕のようなサッカー選手とは違い、仕事の場合では段取りなどの準備も大事だと思います。しかし、先のことばかり考えすぎて、目の前にある仕事がないがしろになってしまうのは本末転倒です。将来の自分というのは、今の自分の積み重ねであることを忘れないようにしよう。

■集中できる環境づくり、集中力を高める練習をしよう

「目の前の課題に集中できない」という人も多いかもしれない。しかし、「明日やろう」と先延ばしにしても意味がない。状況は悪くなるばかりです。サッカーでも「筋トレは明日やろう」と先送りすれば、試合で不甲斐ないプレーをすることになります。

 大きな仕事や課題ほどリスクを恐れたり、面倒になったりするかもしれません。でも、どうせやらなければならないなら、今すぐに始めたほうがいい。なかなか手をつけられないなら、小さな作業から始めてみてはどうだろうか。簡単にできる作業をしていると、自然と勢いがついて集中力が増していくものです。まずは最初の一歩を踏み出す意識をもつことが大切だと思います。それは小さな一歩だってかまいません。

 最近はインターネットやメールで、どんどん情報が入ってきてしまうので、集中力が途切れがちになりがちです。そういう人は、「今日の午後はメールを見ない」「これから1時間はスマートフォンの電源を切る」など、集中できる環境をつくることも大事です。誰かに話しかけられないように、空いている会議室を使ったり、近くのカフェへ行くのもいいかもしれません。

 ふだんの食事の時間などでも、スマートフォンやテレビを遠ざけて、「これから15分間は食事を味わう」という感じで目の前のことに集中する。それを続けることで、目の前のことに集中することが苦ではなくなるはずです。

 人は「目の前のことに集中しよう」と思っても集中できるものではありません。まずは最初の一歩として集中できる環境を自分で整えてみてはどうだろうか。

■継続は力なり。ドロップアウトせずに続ける秘訣

 どんな大きな成果も一つひとつのプレーや練習の積み重ねの結果です。だから、まわりをびっくりさせるような結果を出したければ、目の前の物事や課題に、丁寧にしっかりと取り組んでいく以外に道はありません。

 当たり前だけれど、プロで活躍しているサッカー選手は、最初からサッカーがうまいわけではない。淡々と練習を積み重ねてきたからこそ活躍できるのです。もちろん、才能の有無もあるだろうけど、才能だけでプロになった選手などいません。淡々と一つひとつの課題をクリアする努力を続けた人が、長く第一線で戦うことができるのです。

 努力を続けるには、好きなことをするのがいちばんだろう。こういうと身もふたもない話になってしまうけれど、実際、楽しくないことは続かないことが多い。「楽しくないことは続かない」と知ることが、何かを継続することの最大の秘訣なのかもしれない。そのうえで、日々、淡々と行動を積み重ねることで、気づいたときには高いレベルまで到達することができているはずです。

「1万時間の法則」というのを聞いたことがある人もいるかもしれませんが、何事もプロ並みの専門性を身につけるには、1万時間に及ぶ鍛錬の繰り返しが必要だといいます。サッカーでもボールをうまく蹴るコツはいろいろありますが、それらを何度も繰り返し練習することによって、どんな状況でも思い通りにボールを蹴ることができるようになるのです。逆に、何かを1万時間続けることができれば、プロにもなり得るということ。ぜひ、継続できるものを見つけ、一瞬一瞬に全力を尽くしてやってみてほしいと思います。

遠藤 保仁(えんどう やすひと)
1980年1月28日、鹿児島県生まれ。鹿児島実業高校卒業後の1998年に横浜フリューゲルスに入団。京都パープルサンガを経て、2001年にガンバ大阪に加入。数々のタイトル獲得に大きく貢献し、2003年から10年連続でJリーグベストイレブンに選出され、現在もガンバ大阪の中心選手として活躍中。また、U-20日本代表をはじめとし、各年代の日本代表に選出され2002年11月に日本代表国際Aマッチデビュー。その後は、日本代表の中心選手として活躍し3度のワールドカップメンバーに選ばれる。「日本代表国際Aマッチ出場数最多記録保持者」「東アジア最多出場記録」「2009年アジア年間最優秀選手」「2014年JリーグMVP」など数多くの記録を持つ。178㎝、AB型。
遠藤保仁オフィシャルサイト「Yatto7」https://yatto7.jp/
遠藤保仁公式ブログ https://lineblog.me/yasuhito_endo/