誉田哲也最新作! 大人になりきれない大人に贈る、青春ガールズバンド小説

文芸・カルチャー

2018/3/29

『あの夏、二人のルカ』(誉田哲也/KADOKAWA)

 剣道に青春を捧げる2人の女子高生を描き出した『武士道シックスティーン』で知られる誉田哲也氏が、今度はガールズバンドに青春を捧げた女子高生たちを描き出す。その小説の名は、『あの夏、二人のルカ』(KADOKAWA)。『武士道シックスティーン』では性格も戦いかたも相反する2人の女子高生が切磋琢磨しながら成長していく姿をいきいきと描き出したが、このガールズバンド小説では、どんな「2人のルカ」を描き出すのだろうか。誉田哲也氏というと、“姫川玲子シリーズ”の『ストロベリーナイト』、「ジウ」シリーズといった警察小説というイメージを持っている読者もいるかもしれないが、誉田氏は青春小説こそ素晴らしい。ドラム、ギター、ベース、ボーカル、そして、マネージャー…。バンドメンバーである5人の女子高生たちの葛藤は、今まさに青春を送っている人から大人になってしまった人たちまで多くの人の心を感動させるにちがいない。

 この物語は2人の女性の視点で紡がれる。名古屋での結婚生活に終止符を打ち、東京・谷中に戻ってきた沢口遥は、「ルーカス・ギタークラフト」という見たことがない店ができているのを見つける。店主の乾滉一はギターの修理だけでなく、日用品の修理もするらしい。遥はどうしてかその店のことが気になり、滉一の店に通うようになり…。一方、高校生でドラマーの久美子は、クラスメイトの翔子、実悠、瑠香とともにバンドを始動させた。そこにやってきたのは、転校生のヨウ。彼女の非凡な歌の才能に衝撃を受けたメンバーは、ヨウをボーカルとして迎え入れる。そして、ある日、彼女たちのバンド「RUCAS」にプロデビューの話が持ち上がるのだが、その日を境に、ヨウと久美子の間に少しずつ溝が深まっていって…。

 特に久美子たちの姿に惹きつけられた。バンドを組み、練習をしていくさまは、あまりにもリアル。バンド経験者からすれば、懐かしくなるような描写がたくさんだ。音が自分の手からすり抜けていくようにバラバラになる演奏。鳥肌が立つようにピタッとハマる演奏。そんな彼女たちがELTの「Time goes by」や椎名林檎「すべりだい」などの懐かしい曲を奏でたり、オリジナル曲に挑戦したりするさまは、微笑ましい。

 バンドの雰囲気を一気に変えた転校生のヨウは、どこか不思議な少女だ。歌う時はまるで敵を威嚇するような目つきになり、髪を振り乱して歌う。「その誰かは、何か捨ててくるだろうか…世界は愛では救えない」。どうして彼女はそんな歌詞を書くのだろう。そして、この物語のなかでもう一人の気になる存在が、転校生のヨウを連れてきたバンドのマネージャーの瑠香だ。瑠香は、毎回、最初から最後まで練習を見、演奏内容についても的確にコメントし、メンバーたちのモチベーションを高める。自らは演奏をしないのに、どうして彼女はここまでバンドに尽くすのか。次第にその謎が明かされていった時、その葛藤に胸が締め付けられる。

 誰にだって青春がある。そして、青春時代に受けた傷を引きずってしまうこともある。感動の青春群像小説は、この春大きな話題を呼びそうだ。

文=アサトーミナミ

『あの夏、二人のルカ』刊行記念トークショー・サイン会&LIVEを開催!
【日時】5月13日(日)午後(※決まり次第発表)
【場所】目黒ライブステーション
https://twitter.com/t_honda_e3
(※詳細は後日改めて発表)