「超中高年シングル社会」って何? 2035年に迎える消費社会を大胆予測!

社会

公開日:2018/3/26

『中高年シングルが日本を動かす』(三浦展/朝日新聞出版社)

 2035年、日本の家族構成はシングル(独身者)が多数派になると予測される。その中心を成す中高年シングルの価値観、行動、消費動向をリサーチし、未来を予測した1冊が『中高年シングルが日本を動かす』(三浦展/朝日新聞出版社)である。三浦展氏は、カルチャーを含め幅広い分野において時代を予測してきたマーケティング・アナリストである。

 本書で引用されている国勢調査などの統計から日本の姿をみると、よく知られているように日本の人口はすでに減り始め、高齢化は一層進んでいる。2030年には65歳以上が3685万人、50歳以上が6259万人になるという。超高齢化社会、広くいえば超中高年社会になるのだ。同年の40代以上の一人暮らし人口は1388万人、40代以上の未婚・死別・離別者人口は2444万人と予測される。

 本書では、2035年の超中高年シングル社会を見据えて、現代の「ヤング(34歳以下)」「ミドル(35~59歳)」「シニア(60歳以上)」のシングルのライフスタイルから消費のポイントを分析している。簡単に書中のキーワードを挙げてみよう。

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●男性ヤング(34歳以下)
 ・料理
 ・資格取得
 ・身だしなみ(マッサージ、エステ)
○女性ヤング(34歳以下)
 ・酒飲み
 ・DIY
 ・ファストファッション、古着、ネット購入
 ・美容(消費は低いがナチュラル・オーガニック商品を好む)
 ・人間関係消費(教養・娯楽的なクラブ費や会費)

●男性ミドル(35~59歳)
 ・病気予防(人間ドック、快適なベッドなど)
 ・ペット
 ・身だしなみ(特にオーラルケア)
○女性ミドル(35~59歳)
 ・即効性のある美容、家電
 ・保健医療費(予防とケア)
 ・ヨガなどスポーツ
 ・ペット

●男性シニア(60歳以上)
 ・アメリカン(団塊世代)
 ・調理済み食品
 ・ペット
 ・歯と目
 ・スポーツ
○女性シニア(60歳以上)
 ・肉好き
 ・大型家具、高機能な家電
 ・歯

 著者は、シニアやミドル世代が若々しさを感じられるものや、将来の不安を軽減できるモノ・サービスなどのベネフィットを提案していくことが、今後の消費拡大につながるとみている。特に「家事サービス」は、男女の各年齢層で今より拡大しそうな傾向にあるという。裏付けとして本書からいくつか、シングルで暮らす個人のライフスタイルをみてみよう。

●男性52歳(コンサルティング関係)
 サプリを含め栄養バランスに気をつけている。友人知人も多く仕事も充実しており人生は楽しい。老後は金銭面より独居による不安の方が大きいかも。仕事をしなくなったら孤独死するのかなぁ。洗濯、風呂掃除などが面倒なのでもう少し稼げれば外注したい。

○女性47歳(賃貸住宅管理業 離別)
 自己研さんのための読書やセミナーが増えた。食品は、有機栽培やオーガニックなど、産地や品質にこだわる。2回目の結婚はしたいですよ。

●男性70歳(自営業)
 眼鏡は本を読む時にしかかけない。ふだんは近眼用コンタクトレンズを使用。コムデギャルソンのポロシャツにジーパンで、夕方から毎日飲み歩く。趣味の演劇と建築をテーマに本を書きたい。

○女性76歳(無職)
 健康のために20年前から水と酢にはこだわっている。がんが見つかったが抗がん剤は飲みたくない。楽しくなくては生きている意味がないから。

(※写真はイメージです)

 健康をケアし、病気やケガを予防することが重視され、また個人化した人々は他方で人とのつながりを求めるという、複雑で新しいコミュニティが模索されている。これからの日本は75歳まで働くための「セルフケア社会」になると著者は分析している。

 話題になったところでは、ずっとシングルだった阿川佐和子が63歳で69歳のお相手と結婚した。また、55歳の藤あや子は、自身の娘より若い年下男性と再婚している。

 やがて迎える中高年シングル社会のライフスタイルは人それぞれ。著者は、「幸福の多様化」の時代でなければならないと述べ、「生涯未婚率という言葉をやめよ!」「今どき50歳の段階で未婚だからといって、生涯未婚と決めつけるのはおかしい」と語る。私も同感である。長い人生、いつ結婚しようといつシングルに戻ろうと、「幸福」は人それぞれ。本書から学ぶキーワードは「幸福の多様化」と「セルフケア社会」であろうか。リアルな中高年シングル社会の現状と未来の様相がわかる1冊である。

文=泉ゆりこ