人生の答えは、答えのない質問集からもたらされることがある…かもしれない

文芸・カルチャー

2018/3/28

『質問』(田中未知/文藝春秋)

 最近本屋でよく見かけるのは「〇〇になる方法」や「〇〇な人がやっている10のこと」のような、何かのための回答書だ。手早く答えを手に入れて、さっと問題を解決してしまいたい。それはそれで魅力的である。だがこの本は、それらとは真逆の位置にあるような本だ。なにしろ問題しか載っていないのだから。

『質問』(田中未知/文藝春秋)は、本当に質問しか載っていない。365個の質問が、右から開けば日本語で、左から開けば英語で書かれたページに遭遇する。答えも、ヒントも、挿絵もなく、ただただ白い余白が贅沢に使われている。

自分を数字で言うといくつがよいですか
二十秒でできる行為は何がありますか
この1年間に別れた人は何人いましたか
時間を保存する方法を知っていますか

 どうとでも答えられる質問であり、なんと答えてよいかわからない質問でもある。

人に知られたい秘密をいくつ持っていますか
覚えている夢の量と忘れてしまった夢の量ではどちらが多いですか
泣くことも快楽のうちでしょうか
ここより一番遠い場所はどこでしょう

 質問に何の意味があるというのか。私は何かの答えはずっと探しているけれど、質問を探したのは、口下手なあまりよく知らない人と話すときくらいだ。

記憶から解放されるでしょうか
逃亡の方法はいくつあるでしょうか
偶然は必ず運が支配すると思いますか
海にも年齢があると思いますか

 答えを出したからといって、1年後もそれと同じ答えを出せるかどうかはわからない。そもそも、その答えが正しいかなんて判定できはしないし、正しくあるべきかもわからない。

今日何かをなくしましたか
生まれてくるのが早すぎましたか 遅すぎましたか
誰かと共通の記憶を持ちたいと思いますか
何年以前のことを古いと言うのでしょうか

 表紙には、寺山修司の「さよならの城」から抜粋されたことばが装飾されている。

子供の頃から……わたしはただ「質問」になりたいと思っていたのです。なぜ?と問うことの出来る質問、決して年老いることのない、みずみずしい問いかけに……

 何にでもすぐに答えを(考えるのではなく)探し出すことを習慣化し、意味のないことを考えることはいつからか完全に止めてしまっていたと、本書を手に自分を思い返した。考えなくてもいいことは考えなくてもよいのだけれど、平穏無事な毎日はありがたいのだけれど、空いた時間で仕事の勉強もやらなきゃいけないのだけれど、必要と重要なことだけで埋まっていく日々は贅沢だけど何か物足りない。

 同じように感じるならば、あるいは現状に手一杯で行き詰っているなら、無造作に本書を開いて出会った質問について、じっくり考えてみてはいかがだろうか。考えた後は、少し視点を変えて世界を見ることができるかもしれないから。

文=高橋輝実