午後ティー×ポッキーのコラボが長く続いている理由って?

ビジネス

公開日:2018/4/5

『ブランドのコラボは何をもたらすか 午後の紅茶×ポッキーが4年続く理由』(午後の紅茶×ポッキープロジェクト:編著/宣伝会議)

 世の中の女子たちを「あっ」と驚かせた午後の紅茶(キリン)とポッキー(グリコ)のコラボ第1弾からおよそ3年。今年2018年の2月20日からは、「グリコ ポッキー」×「キリン 午後の紅茶」プロジェクト第4弾で誕生した午後の紅茶・アサイーヨーグルティーとポッキー・バナナブランのコラボ商品が店頭に並んでいる。

 これら第1弾から第4弾までのコラボが誕生し、かつ成功を収めたことのウラには、キリン、グリコそして広告代理店・電通の女子社員たちのたゆまぬ努力と試行錯誤があった。本稿では、『ブランドのコラボは何をもたらすか 午後の紅茶×ポッキーが4年続く理由』(午後の紅茶×ポッキープロジェクト:編著/宣伝会議)に掲載されている2商品のコラボの成功秘話と、そこから導き出されるコラボレーションマーケティングのメソッドを少しだけみなさんにご紹介したい。

■プロジェクトのメンバー構成と進め方をひとひねり

 このコラボ企画の発端となったのは、キリンの社員とグリコの社員の何気ないビジネストークだ。「何かおもしろいこと、一緒にできたらいいですね~」という会話がこの大きなプロジェクトを動かすこととなったのである。

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 偶然にも午後の紅茶とポッキーの双方の商品が“Happiness”という言葉をスローガンに掲げていたことに気づいた両社の担当者は、意気投合し着々とコラボに向けた話し合いを進めていったのであった。2つの商品が共通に抱える課題も輪郭をあらわにし、いよいよプロジェクトメンバーの編成にさしかかったときに、早速アイデアが生まれたのである。

 2つの商品のメインターゲットは20代から30代の女性だということで、プロジェクトメンバーもこれに合わせることに。メンバーの年代は近けれど、入社2年目の若手社員からママ社員、東京勤務の者や大阪勤務の者など境遇は大いに違っていた。さまざまな会社、境遇、役職の人たちが入り混じることで、闊達な議論を同じ土俵上でできるということに意味があったのだ。これまでとは違った議論のスタイルをとったことが、コラボ成功のひとつのカギとなったといえるだろう。

 そして、メンバー編成だけでなく、議論の進め方にも工夫が凝らされている。チーム内の全員が自分の役割をいったん脇において同じ課題を持ち帰り、それについて一人ひとり意見を出し合う「完全宿題制」のスタイルをとったのだ。メンバー全員で課題についてゼロから考えることで、それぞれの凝り固まった考え方を解きほぐし、偶然の産物を大いに享受できる、というメリットがあったという。

 彼女たちは、こうした新しいプロジェクトのスタイルを用いて、思いもよらぬアイデアをどんどん生み出していくことで——紆余曲折は多々あったものの——これまでにはないコラボレーションを成功させていったのである。

■ブランドのコラボがわれわれに教えるコラボマーケティング論

 ブランドのコラボレーションを行うことで見えてくるコラボマーケティングを進めていくうえで大切なことが浮かび上がってきた。それは、一見すると矛盾するようではあるが、「いかにしてブランドのしがらみから脱却して、いかにブランドの『らしさ』を残すのか」ということだ。

 まず、ブランドのしがらみからどのようにして抜け出すかについてだ。各ブランドは、商品として最低限保持しておかなければならないルールをもっている。ときにこれが、コラボをする際の足かせとなってしまうことがあるのだ。しかし、他商品とコラボすることでいままでタブーだと思われてきたことが市場では大ウケし、単独商品としてもヒットすることがあるという。ブランドのしがらみから抜け出す方法を考えることは、新商品開発をするうえで、いわば試金石のような役割を果たすことになるのである。

 次に、ブランドらしさをどのようにして残すかということに関して。多くの商品開発の場で、ブランドの意味がはき違えられていることが往々にしてあるという。開発担当者の多くが、ブランドは会社が作るものと考えているが、実際は顧客が心の中に自分で作り出すものなのである。だとすれば、「らしさ」は市場で問うてみることで生まれてくるはずだ。当然、時代に応じて顧客の好みも変化をするから、ブランドの「らしさ」も時の流れに沿って変わっていく。ブランドの「らしさ」を残すには、時間軸に沿った商品の細やかな調整やマネジメントが大切なのである。

 ここまで、午後の紅茶とポッキーがコラボするに至るまでのいきさつと成功秘話、そしてそこから引き出されるコラボマーケティングの理論をほんの少しだけ紹介してきたが、新鮮な考え方や開発手法が見て取れたのではないだろうか。

 本書は、マーケティング担当者はもちろん、何か新しい企画を始めたいと思っているビジネスマンにおすすめしたい。自社の商品やサービスを見つめなおし、新たな視点を与えてくれるきっかけになるだろう。

文=ムラカミ ハヤト