どんでん返しのラストで衝撃をさらう! 全国の書店員を動揺させた異世界ファンタジー『偽りのフレイヤ』

マンガ・アニメ

2018/4/5

『偽りのフレイヤ』(石原ケイコ/白泉社)

「少女漫画らしい絵柄なのにラストがあれって……」「色々なものが詰めこまれすぎていて、いい意味で頭がパンクしそうでした」「まさに衝撃の一話。フレイヤどうなっちゃうの…?」と連載スタート早々、全国の書店員のあいだに動揺を走らせたマンガ『偽りのフレイヤ』(石原ケイコ/白泉社)。王国の危機を救うために立ち上がる少女と彼女を守る騎士たちを描いた、ザ・王道のファンタジー。『アーサー王伝説』しかり『ゲド戦記』しかり、王道とは常に悲劇性をはらんでいるもの。本作も期待を裏切らない、波瀾万丈な始まりである。

 主人公は、小国テュールのさらに小さなテナ村で暮らすフレイヤ。体を壊した母を支えるけなげな少女だ。周辺国を奪い支配する北の大国シグルズの脅威におびえながらも、村の人々と平和に暮らしていたある日、幼なじみの兄弟が帰ってくる。他国にまで名が知れ渡る皇太子の近衛・黒騎士アーロンと、一般兵の弟・アレク。身寄りのない2人はフレイヤの母に引き取られ育てられた、家族同然の存在だ。そんなアーロンがシグルズから国と王子を守る代償に、首を差し出す運命にあるとフレイヤが知ってしまったことから物語は始まる。強く聡明なテュールの希望・エドヴァルド王子の窮地を救うため、そしてアーロンを守るため、フレイヤは泣き虫を封印して王子の影武者になることを決める。そう、彼女は王子と瓜二つだったのだ。

 というわけで物語は、国を守る悲劇のヒロインを中心に展開していくのだが。この悲劇がしょっぱなからなんとも、えぐい。読みながら「マジかよ!」とうっかり声をあげてしまった程度には衝撃的、なのだが同時に、「そうそう、こういう重厚な異世界ファンタジーが読みたかったのよ!」と歓喜した。

 もちろん、優しく穏やかな物語に癒されたいときもある。だがときには先の読めない、期待を裏切る展開に「ひどいよ!」と地団駄ふみながらページをめくりたい。王国の存亡をかけて、国同士の陰謀をわたりあるき、理不尽な暴力に立ち向かいながら、それでも倒れず立ち上がり続ける主人公の奮闘が見たいのである。

 もちろんロマンスもある。アーロンに恋するフレイヤを、ふがいない思いでアレクが見守る三角関係はそれだけでときめく要素十分だが、フレイヤのため命を懸ける2人の想いが強すぎるため、フレイヤの悲劇性が増してしまうのも事実。さらに、王子を崇拝するがゆえにフレイヤを影武者として教育しようとするこれまた王道のイケメン・白騎士ユリウスも気になるところ。なんとな~く彼にあやしい気配を感じるのは私だけだろうか。……なんて、1コマ1コマの密度が濃すぎて、智謀策略の気配が強すぎて、誰が味方で誰が敵か、読み手を疑心暗鬼にさせる構成も巧みで見事。

「心優しい少女が歩むことになる『偽り』の道は、果たしてどのような場所に続いているのか」と書店員コメントでも寄せられているが、少年王子のふりをして、限られた側近以外のすべての人々を欺く少女の嘘が、どんな未来を紡ぎだすのか。どんでん返しに次ぐどんでん返しに目が離せない期待の新作である。

文=立花もも