水川あさみ主演でドラマ化『ダブル・ファンタジー』。「性」を追い求めた女性脚本家は、最後に何を見つけ出す?

文芸・カルチャー

2018/4/15

『ダブル・ファンタジー』(村山由佳/文藝春秋)

 今夏、水川あさみの主演で実写ドラマ化されることが決定した『ダブル・ファンタジー』(村山由佳/文藝春秋)。本作は、恋愛小説の名手として知られる村山由佳による、「大人の性愛」を真正面から描ききった衝撃作だ。2009年に発表され、「第22回柴田錬三郎賞」「第4回中央公論文芸賞」「第16回島清恋愛文学賞」をトリプル受賞。2003年に「第129回直木三十五賞」を受賞した『星々の舟』(文藝春秋)とともに、作家・村山由佳の代表作といっても過言ではないだろう。

 本作の主人公となるのは、35歳の女性脚本家・高遠奈津。夫・省吾とともに田舎に暮らす彼女は、日々原稿と向き合い、創作活動に励んでいる。しかし、次第に大きくなっていく省吾からの抑圧、そして誰にも言えない苦しみ。このままでは作家としてダメになることを感じた奈津は、恩師である演出家・志澤の助言もあり、自由を求めて家を飛び出すことを決意する。

 奈津を苦しめていたものの正体、それは「性への欲望」だ。省吾に抱いてもらえないこと、抑えきれない欲求、それを認識せざるを得ない自分……。しかし、家を出た彼女は、自分を少しずつ解き放っていく。志澤、大学時代の先輩・岩井、仕事を通じて知り合った僧侶・祥雲、出張ホストに駆け出しの役者・大林と、幾人もの男と関係を持つようになる。そのたびに知るのは、自身のなかに眠る「女としての一面」。ベッドの上でそれが満たされると同時に、彼女は生きることについて貪欲になっていくのだ。

 本作で描かれる「性」は、そのまま「生」とイコールだ。奈津が男に抱かれたいと思うのは、自身に空いた穴を穿つように埋めてもらいたいからなのだろう。それはただ快楽を求めてのことではない。寄る辺のない寂しさ、自身の存在価値、そういったものを埋めてもらうため。すなわち、この世のなかで生きていくためなのである。

 もしかすると本作を読んだ男性陣のなかには、奈津の姿を通して、「女性の性の怖さ」に臆してしまう人たちもいるかもしれない。しかし、これは「男性だから」「女性だから」といった二元論で切り分けられるものではないと思う。性、そして生を求める奈津は、きっと誰のなかにも眠っているのだ。それを濃密な文体でまざまざと見せつけられたときに共感するのか、戦慄するのかは、その読者が自分とどう向き合っているのか次第だろう。そういう意味では、ぜひ男性にも読んでもらいたい一作だ。

 夫のもとを離れ、性愛を求める旅路に出た奈津が、その果てに何を見つけるのか。今夏放送されるドラマ版とあわせて、その答えを目に焼き付けてもらいたい。

文=五十嵐 大