「恋人でもない男におっぱい揉ませて悔しくないの?」ラブコメの“舞台裏”を暴く!? そして掟破りの衝撃エンドへ…『このかけがえのない地獄』

アニメ・マンガ

2018/4/21

『このかけがえのない地獄(電撃コミックスNEXT)』(アッチあい/KADOKAWA)

 日々世に送り出される無数の漫画作品のなかでも、長い歴史とバリエーションを有するジャンル。それが「ラブコメ」。

 そのなかでも「ハーレムもの」−−主人公のもとに、なぜか美少女たちが集まってきて、お風呂での鉢合わせや温泉旅行といった「ラッキースケベ」なイベントが毎回発生し、いつのまにか彼を奪い合うようになる……といった現実ではありえない夢のようなシチュエーションを味わわせてくれるこのジャンルは、いつの時代も根強い人気を誇ってきました。

「ハーレムものが好き!」という方、あるいは「そんな都合のいいことあるわけねえだろ」と醒めた目線を送っている方、双方におすすめしたい漫画が、短編集『このかけがえのない地獄(電撃コミックスNEXT)』(アッチあい/KADOKAWA)。本作に収録された「4番目のヒロイン」は、そんなハーレムものが見せてくれる「夢」の舞台裏を、独自の視点で描ききっているのです。

「4番目のヒロイン」の舞台は、とある高校。しかし、その高校が存在するのは、少年漫画誌で連載されているラブコメの世界のなか。そこでは、日々「主人公くん」のもとにかわいいヒロインがやってきて、彼を好きになって、なぜだかラッキースケベも発生してしまう……という典型的な「ハーレム」が展開されている。しかしラブコメ世界といえど、ただ待っているだけではラッキースケベは起きません。女の子たちが一致団結して、「主人公くん」にラッキースケベが起きるように、綿密に計算して行動しているのです。

(C)atchiai 2018

 そんな「主人公中心の世界観」と「ラッキースケベ」を素直に受け入れ、ハーレム世界のなかで一生懸命自分の役割をまっとうしているのが、3番目のヒロイン・メグミ。“お色気担当”である彼女はツインテールで巨乳、「主人公くん」がうっかり胸を触ってしまっても「ふええ〜〜」と叫ぶだけの、おっとりしてやさしい女の子です。

 他のヒロイン同様、最終回で主人公くんに選ばれる女の子になりたいということだけを考えて、日々暮らしていたメグミでしたが、ある少女との出会いをきっかけに彼女の存在意義に転機が訪れます。
それは、「4番目のヒロイン」というキャッチコピーを背負った転校生・岬。

(C)atchiai 2018

 ラブコメの世界観とは一線を画する、一匹オオカミのような雰囲気をまとった岬の出現に、最初は「また人気落ちちゃうかも……」とヒロインとしての自分の立場を気にするメグミ。しかし、岬のヒロインらしからぬ言動に振り回されるうちに、「ヒロイン」という存在、そして「ラブコメ」という世界のありかたについて、違和感を持つようになっていきます。

(C)atchiai 2018

 やがて、メグミはラブコメにおいて絶対に突っ込んではいけない領域である“主人公くんの魅力”に疑問を抱き始めてしまう……。

(C)atchiai 2018

 果たして岬は何者なのか? そしてメグミはどうなってしまうのか?

 メグミのキャラクター造形は、一見「ラブコメにありがちなやつだな〜」という感想しか抱けない非常にステレオタイプなものです。しかし「ありがちだな〜」と思って読み進めていると……、ラスト、彼女が繰り出すある「行動」を目にした瞬間、ハーレム好きもそうでない人も「えええええええ!?」と叫び声を上げてしまうことになるでしょう……。

 本短編をはじめ、『このかけがえのない地獄』に出てくる女の子たちは、全員めちゃくちゃ不器用で、自分の気持ちを表に出すのが苦手。だけど、心の中ではいろいろなことを考えていて、ときに予想の斜め上の方向に突っ走ります。

「いつも読んでるパターンじゃん」「どうせこうなるんでしょ」と思っているところを、軽々と飛び越えた展開が訪れ、「ありがちなキャラだな〜」と見くびっていたキャラが、予想もつかない行動に走り出す。

 漫画の「お約束」に慣れている読者こそが術中にハマってしまう……それが『かけがえのない地獄』の中毒性。

 ラブコメが好きな人も嫌いな人も、すべての「漫画好き」に手にとってほしい一冊です。

文=平松梨沙