シンプルに考える。するとデートもビジネスもきっとうまくいく

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公開日:2018/5/10

『SIMPLE RULES 「仕事が速い人」はここまでシンプルに考える』(ドナルド・サル、キャスリーン・アイゼンハート:著、戸塚隆将:監訳/三笠書房))

 戦場の兵士の死亡率は著しい減少傾向にあるらしい。これは医療技術の進歩はもちろんのことだが、戦場医療の現場で取り入れられた「トリアージ」と呼ばれる傷病患者の選別法によるところが大きい。

(1)指示に従えるか
(2)脈拍数が毎分120未満か
(3)呼吸数が毎分10以上30未満か

 という3つのルールに基づき負傷者は4つのグループに分別され、治療や搬送の優先順位が決められる。まさに“必要最小限”でしかない極めてシンプルなルールなのだが、これに従うことが複雑な状況下で迅速かつ正確な判断を要求される野戦病院の質を向上させたのだ。

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 このような英知を踏まえて、“シンプルなルール”の重要性と実用例、そして具体的な実践例を提示する本書『SIMPLE RULES 「仕事が速い人」はここまでシンプルに考える』(ドナルド・サル、キャスリーン・アイゼンハート:著、戸塚隆将:監訳/三笠書房)を本稿ではご紹介したい。

■「シンプルなルール」の4大特徴は、どれもシンプル!

 シンプルなルールに基づいて成功した例として代表的なのは、アップルのiPodだ。MP3プレイヤーの開発としては多少時期で出遅れたものの、その至ってシンプルなデザインと操作性が世界中で多くの消費者の心を掴んだ。

 そもそも、シンプルなルールの成功例は自然界にも多数存在するらしい。巣と餌との最短経路を取るアリの行列や、隊列を組んで歩くガチョウの群れなどは、どれも必要最小限と言えるシンプルな仕組みで効率的な行動を取っている。過酷な自然の中で淘汰されてきた仕組みは、どれも至ってシンプルで良くできているのだ。

「個人であれ、組織であれ、政府であれ、ルールはできるだけシンプルなほうがうまくいく」と本書は断言する。時間や情報が限られていても、迅速かつ正確な判断を下せること、また大人数でも混乱なくアクションを取れること、というシンプルであるがゆえの利点は、世界中にあるビジネスの成功例と自然界の摂理が実証している。

 本書では「シンプルなルール」のさまざまな事例が紹介されているが、そのすべてに共通するのが以下の4つの特徴だ。

(1)ルールの数が少ない
(2)使う人に合わせてカスタマイズできる
(3)具体的である
(4)柔軟性がある

 仕事やビジネスだけではない。物事や情報や条件が複雑に絡み合うこの世界で生き抜くうえで、何をどう考え、どう動くか。本書から改めて学び得る「シンプルなルール」は、あなたの強力な武器になるはずだ。

■ルールの適用範囲は、デート、恋愛、子育てまで無限大

 本書によると、シンプルなルールの活用は、ビジネスを成功に導くだけでなく、あなたのプライベートな問題に関してもかなり有効だそうだ。

 ビジネスであれば、経済価値や組織の大きさなどの基準は数値化することができるので、シンプルに考える判断基準を設けやすい場も多いだろう。しかし、問題が「あなたらしい生き方」に関する課題となったらどうだろうか? これは過去何世紀も哲学者たちを悩ませてきた重要な問題でもある。

 自分らしい生き方や人生の価値というと非常に曖昧なため目標が漠然としてしまいがちだが、「自分にとって価値のある分野」と視点を絞ると、少し扱いやすくなるという側面を本書は提案している。こうやって思考の仕組み化を紹介しながら、シンプルなルールのプライベート応用例がいくつか解説される。

●息子に算数の宿題をさせるためのシンプルなルール
●マッチングアプリで的確に相手を選別し、デートを成功に導くためのシンプルなルール

 どうだろう、実生活に応用できそうな幅もかなり広いようだ。

 技術の発展、価値観の多様化などが進み、私たちの生きる世界は日々複雑になっていく。そうした流れの中で「シンプル」に考えることの価値はますます上がっているのではないだろうか。溢れかえる情報に流されることなくタフに生き抜くためには、自分自身の「シンプルなルール」を構築することが重要だと感じる。

文=K(稲)