新たな社会現象の予感? 脚本家・北川悦吏子が描く朝ドラ『半分、青い。』の魅力

エンタメ

2018/5/13

『半分、青い。上』(北川悦吏子/文藝春秋)

 新しいさわやかな朝がやってきた。2018年上半期のNHK連続テレビ小説『半分、青い。』の人気がじわじわと広がっている。ヒロインを演じる永野芽郁と、幼馴染役・佐藤健の演技にもひきつけられるが、何よりも、その物語自体に魅了されている人が多いのではないか。1970年代から1990年代に漂うどこかノスタルジックな雰囲気。左耳にハンデを負ったヒロインを支える家族の温かさ。ヒロインと幼馴染の恋愛関係になりそうでならない距離感…。どこの場面をとっても、なつかしいような切なさを感じるのはどうしてだろうか。

 脚本をつとめるのは、北川悦吏子氏。北川氏といえば、『愛していると言ってくれ』『ビューティフルライフ』『オレンジデイズ』などで、障害を持つ主人公を中心とした恋愛を描き、社会現象を巻き起こしてきた人物だ。『半分、青い。』も新たな社会現象を生み出しそう。岐阜出身であったり、左耳が聞こえなかったりという設定は、突発性難聴となり聴神経腫瘍と診断された北川氏の実体験が土台になっているという。北川氏の新たな代表作となりそうなこの朝ドラを、原作本『半分、青い。上』(北川悦吏子/文藝春秋)とともに、今後の展開を見守りたい。

 舞台は、岐阜県東部の架空の町・東美濃市梟町。大阪万博の翌年、1971年に、小さな食堂を営む両親のもとに、楡野鈴愛(にれの・すずめ)は誕生した。彼女の生まれる5分前に同じ産婦人科で生まれた萩尾律は、鈴愛の幼馴染として、いつも一緒に行動してきた。小学校の時、鈴愛が病気で片耳を失聴した時も、彼女を支えたのは、律だった。やがて、高校を卒業し、鈴愛は、漫画家を目指して上京することになる。律も、大学に通うため、そして、鈴愛を支えるため、東京へと出るのだが…。

 鈴愛は、いつだって天真爛漫。あっけらかんとしていて、単純だが、時に大胆な行動をとっては、周囲を困らせる。一番に振り回されているのは、律。小学生の時から、鈴愛は困ったことがあると、律を頼っていた。そんな姿に、周囲は、2人が恋愛関係になることを期待するが、なかなかうまくいかない。東京に行った後も、周囲の策略で近くに住むことになる鈴愛と律。だが、2人はそれぞれ別の人に恋をする。2人はお互いの恋について、報告し合う。だが、互いが互いの恋愛にどこか複雑な感情を抱えていることには気づけない。それに、律の恋人は鈴愛にヤキモチをやいて…。鈴愛と律のもどかしい距離に胸がしめつけられる思いがする。

 また、鈴愛を支える家族の姿にも胸があつくなる。たとえば、上京する鈴愛に、鈴愛の母・晴は言う。

「あんたはいいね。あんたは、楽しいばっかりでいいね。おかーちゃんは、淋しくてたまらん。今でも、スーパーやデパートや、本屋や、いろんな場所で、おかーちゃんって呼ぶ小さい子の声に振り向いてまう。あんたが、私を、スズメがおかーちゃんを呼んどるんやないかって。振り向いてまう。あんたはもう十八かもしれんけど、おかーちゃんの中には、みっつのあんたも五つのあんたも十三歳のあんたも、全部いる。まだ、いる。十八や。大人や、もう大人やって言われても…」

 家族の愛情を一身に受けて育ってきた鈴愛は、東京でどんな日々を過ごすのだろうか。高度成長期の終わりから現代までを七転び八起きで駆け抜け、やがて一大発明をなしとげるまでを描く『半分、青い』。漫画家にはおさまらない鈴愛の姿をぜひとも原作本とドラマの両方で応援し続けたい。

文=アサトーミナミ