「不倫をしたければ試しにやってみるといい」94歳・佐藤愛子の痛快すぎる人生問答

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更新日:2018/5/17

『役に立たない人生相談2 好きなようにやればいい。』(佐藤愛子/ポプラ社)

 読者の人生相談に回答する書籍は、世の中にいくつもある。しかし『役に立たない人生相談2 好きなようにやればいい。』(佐藤愛子/ポプラ社)は、やはり別格だった。相談者のひと癖もふた癖もある問いに対し、波瀾万丈をくぐりぬけてきた94歳現役作家の佐藤愛子先生が愉快で痛快で明快な回答の数々を披露している。圧倒的な人生経験に裏打ちされた言葉に、読んでいて思わず唸ってしまった。

 本書を読んだ私が独断と偏見で選んだ珠玉の人生問答を2つピックアップしたので、その内容をちょっぴりご紹介したい。

■不倫している友人が羨ましい(42歳女性・主婦)

 まずは、相談者のママ友が韓国の男性と不倫をしており、その様子を見ていると自身も浮気がしたくなってしまったという衝撃的な内容から。確かに子どもが産まれると、女性は「女」から「母親」へと変身してしまう。子どもの義務教育が終わり、子育ての忙しさから解放されたこの時期に、「もう一度青春を取り戻したい」という気の迷いが生まれることもあるかもしれない。そんな相談に先生はこう言い切っている。

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A.ためしに一度やってみれば?

 一見相談者を肯定しているようで驚いてしまうが、先生はこう続けている。不倫してもう一度青春を取り戻すことは、「いけないとはいわないけれど、くだらんですねえ。不倫というのは夫を裏切り子供を騙すことですよ。(中略)懊悩の坩堝にはまることです。退屈しのぎのセックス遊びで青春が(どんな青春か知らんけど)とり戻せるわけがない。なんならためしに一度やってごらん。 経験したら目が覚めることもあるから」。

 さすが先生だ。ぐうの音も出ない正論に、読んでいるこっちも目が覚めてしまう。先生、ぜひそのお言葉を日本中の迷えるママたちに届けてやってください!

■のんきな娘をやる気にさせるひと言を!(41歳男性・会社員)

 続いては、友達とのいざこざで部活をやめてしまい、それが原因なのか勉強もまったくできなくなってしまった娘を心配する父親からの相談だ。この事態にまったく危機感なくゴロゴロする娘と、「そのうちやる気になるから、放っておけばいいのよ」と同じくのんきな母親に、相談者はやきもきしている様子。これを解決するような“奇跡のひと言”をいただきたい、と迫る父親に、先生はこのような回答をした。

A.娘さん、見どころがある!

 これまた驚くような回答が飛び出したが、先生は「“やる気”というものはいわれてすぐに“ハイヨ”と出てくるものじゃない」と断言する。そして、本人がのっぴきならぬ状況に追い込まれて「こうしてはおられぬ!」と感じたとき、はじめてそれがぬーっと立ち上がってくるのだと自らの経験を語る。さらに、成績が下がっても、「それで悔しがったりせずに平然としている娘さん、見どころがあります。たかが学校の成績くらいで大の男が何を騒ぐ」と相談者である父親を一喝。

 先生は、この回答の最後を「これがあなたの求める私の“奇跡のひと言”です」としめくくっている。めちゃくちゃかっこいいじゃないか!

 昨今は、どうやったら子どもを良い大学へ通わせることができるのか、方法論ばかりが語られており、肝心の子どもの意見が置いてけぼりだ。子どもは、親の道具でもオモチャでもない。子どもだって自分の人生くらい自分で考える。それを厳しくもユーモラスに説く先生の言葉を、全国のパパママの凝り固まった耳に届けたくなってくる。

 このように佐藤先生は、相談者の悩みの本質や人間性を見抜いて、ピシリと回答していく。どこか楽しんでいる節も見受けられ、その懐の深さに舌を巻くばかりだ。この記事を書く私は、人生を迷走中なので、先生のこの姿がとても羨ましくなってしまった。

文=いのうえゆきひろ