本当の幸せってどこにあるの? 仕事に恋に悩むアラサー女子の心に響く『方丈記』の魅力

文芸・カルチャー

2018/5/21

『こころに響く方丈記 鴨長明さんの弾き語り』(木村耕一/1万年堂出版)

 徳永英明の名曲「壊れかけのRadio」の歌詞に、「本当の幸せ教えてよ」という1節がある。

 大学生の時、私は告白してフラれた男性に、1年くらい経ってから「俺には好きな人がいるんだけど、その人には彼氏がいて付き合えないから、君が俺と付き合ってほしい」と謎の告白(?)をされた経験がある。(今思い返しても意味が分からない)。

 その後、私の頭の中で、いつもあの名曲が流れていた。「本当の幸せ」って、どこにあるんだろう。誰か私に本当の幸せ教えて(動揺)…と。前置きが長くなりました。

『こころに響く方丈記 鴨長明さんの弾き語り』(木村耕一/1万年堂出版)は、『方丈記』を意訳し、解説なども加えて、子どもでも読めるように分かりやすく「本当の幸せ」を教えてくれる1冊だ。

 鴨長明の『方丈記』。名前くらい知っているが、実際どのような内容なのか、いまいち分からない方も多いだろう。

 だが「地味」「おじさんが読むもの」なんて思っているとしたら、もったいない。『方丈記』は、「自分の生きる意味って何なんだろう?」「幸せって何なの?」という子どもから大人まで、男女問わず、一度は考えたであろう「普遍的な疑問」に対する「アンサー」を与えてくれている。

■鴨長明は、薄幸の人だった。

 出身は京都。最高位の神官の家に生まれた「いいとこのボンボン」だったが、お父さんの死をきっかけに全てが破綻していく。親族に裏切られ、お金も地位も全て失ってしまう。

 その後も努力して、「出世しよう」「以前の地位に代わる何かを手に入れよう」とするも、なんだかんだうまくいかず、結局最後は「方丈庵」というプレハブ住宅のような家で、人気のない山奥で暮らすのだ。

 さらには人生の内で「大災害」と称される出来事に、なんと5回も遭遇するという…かわいそうになるくらいの不遇ぶり。

 しかしだからこそ、『方丈記』は長明にしか書けない内容となった。お金や、地位や、名誉などの、表面的な「幸せ」ではなく、「本当の幸せ」を見つめることができたのだ。

私たちは、自分が苦しんでいるのは、お金や財産、地位や名誉が足りないからだと思っています。しかし、望んでいるものを手に入れたら、本当に、苦しみは減りますか? 苦しみの色や形が変わるだけではないでしょうか。

 それを長明は「有無同然(うむどうぜん)」と説明している。「有無同然」とは、「有っても苦、無くても苦」のこと。だからこそ、世間や親の目に囚われず、「本当の自分の生きる意味」を考えるべきなのだ。

 特にアラサー女子は、周囲が結婚ラッシュだったり、仕事で重要なポジションに就き出したり、とにかく他人と比較して落ち込みがちではないだろうか。私の場合は、「えっ、また海外旅行行ったの?」的な友人がいたりして、自分との収入格差を憂いたりする…。

 さて、「本当の幸せってどこにあるの?」。壊れかけのラジオに聞かなくても、『方丈記』が答えてくれる。それは自分の「心の中」。幸せになれるかどうかは、自分の心ひとつで決まる。

 有名な1文「ゆく河の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず」にある通り、幸せも悲しみも時と共に過ぎていく。命も美しさも富も、永遠に続くものなんてない。手に入れたと思ったものも、次の瞬間には消えていたりする。

 だから「幸せ」を探すより、自分の心を見つめて、そこに「幸せ」を見出すほうがいいのだ。結局は今置かれている場所で、一生懸命やってみるしかないのだろう。…心に響きました、『方丈記』。

文=雨野裾