小さな生き物たちが教えてくれる「愛」、180度変わる人生! 感動動物ノンフィクション厳選3作品!

文芸・カルチャー

2018/5/29

 時に、動物との出会いが人生を変えることもある――そんな「事実は小説よりも奇なり」という言葉がぴったりの動物ノンフィクションをご紹介したい。

 犬、ペンギン、ハリネズミ、それぞれ個性豊かな動物たちが登場するので、お好きな生き物が出ている作品を読んでみてはいかがだろう。どの作品も、小さな生き物たちが「教えてくれたこと」に心が震える、感動の実話である。

■BBCニュースなど全世界が注目! ランナーと“迷い犬”の耐久レース中での出会い。125キロともに走った奇跡のストーリー!

『ゴビ 僕と125キロを走った、奇跡の犬』(ディオン・レナード:著、夏目大:訳/ハーパーコリンズ・ジャパン)

 ゴビ砂漠を7日間かけて走るウルトラマラソンに参加するため、スコットランドからやってきたディオン。そのレースの最中に突然現れたのは、茶色い野良犬だった。後にゴビと名付けられる彼女は、小さな身体でディオンと共に灼熱の砂漠を駆け抜ける。

 なぜかディオンの傍を離れないゴビに運命を感じ、ディオンはゴビをスコットランドに連れて帰ることを決める。だが、ゴビ砂漠からの道のりは困難を極めた。両国での検疫、多額の費用、煩雑な手続き……遠い砂漠の地で出会った彼女と自国で暮らすためには、多くのクリアしなければならない試練があったのだ。

 本作は犬と人間の「友情」について考えさせられる。

 大昔より、犬は人間の傍で暮らしていた。「狩りのために飼っていた」などの説明をされる場合があるが、本当にそうなのだろうか。「餌をあげて世話をする」という手間をかけるほどに、犬は人間にとって便利な存在だったのか。

 そこには、利害関係を越えた「何か」があったのではないかと思う。

 訳者の夏目氏の言葉を借りる。

「あるのは『そばにいたい』という思いだけだ。なぜそう思うのか、それは誰にもわからない。わからないけど、ただそうしたいのだ」

 ディオンとゴビの出会いと、その後のストーリーは、まさしくその「思い」によって突き動かされた結果だったように感じる。人間と犬がなぜ、これほどまでに長く付き合うことになったのか。それを「理屈」ではなく、感じさせてくれるのである。

 本作はドラマチックな「読みごたえ」があった。過酷なレースの最中にゴビと出会い、彼女と生きることを決めたディオンだが、簡単には物事が運ばない。最後はハッピーエンドとなるのか? いくつもの奇跡にあふれており、まるで映画のようなこの実話は、BBCやハフィントンポストでも話題となり世界が注目することとなった。

■たった一羽生き残った“ペンギン”を救った教師。彼らが「最高の親友」になるまで

『人生を変えてくれたペンギン 海辺で君を見つけた日』(トム・ミッチェル:著、矢沢聖子:訳/ハーパーコリンズ・ジャパン)

 1970年代のアルゼンチンを舞台に、イギリス人の青年教師トムとマゼランペンギンが「最高の友人」になるまでを描いたお話。

 トムは休暇中に、重油にまみれ、浜辺に打ち上げられた大量のペンギンの死骸に遭遇する。心を痛めるトムだったが、たった一羽だけ生きているペンギンがいた。彼はそのペンギンを保護し、海に帰そうとしたが、自分の傍を離れなかったため、勤務先のアルゼンチンの寄宿学校へ連れて帰ることに。

 愛嬌があり、「聞き上手」でユーモアあふれるペンギンは、フアン・サルバドと名付けられ、教師や生徒たちの人気者となる。

 本作では、野生動物と出会い、共に暮らす「楽しさ」や「尊さ」を教えてくれる。人間によって死にかけた動物が、人を癒す。動物が与えてくれる、損得のない愛情に心打たれる作品だ。

 ペンギンの可愛さに癒され、ユーモアな文体にクスリとしつつ、ほぼ無政府状態だったという当時のアルゼンチンの様子もうかがえる、貴重な「記録」としても読める一冊だ。

■たった25g、手のひらサイズの“ハリネズミ”が、獣医の人生を変えた感動実話

『25グラムの幸せ ぼくの小さなハリネズミ』(マッシモ・ヴァケッタ アントネッラ・トマゼッリ:著、清水由貴子:訳/ハーパーコリンズ・ジャパン)

 小さい頃から動物が大好きだったイタリア人男性のマッシモは、牛専門の獣医。けれど最近、自分の人生に「何かが足りない」と不安を抱えている。そんな時に偶然出会ったのが、親とはぐれたハリネズミの子どもだった。

 マッシモはそのハリネズミの子どもをニンナと名付け、保護することに。獣医ではあるが、ハリネズミと深く関わったことのないマッシモは、慣れないながらも懸命に、ニンナの世話をする。

 その出会いをきっかけに、彼の人生は大きく変わっていった。ハリネズミの保護センターを開設するのだ。ハリネズミはイタリアやイギリス、フランスでは比較的身近な動物でありながら、絶滅の危機に瀕している保護動物だという。

 マッシモにとってニンナは、愛らしく護るべき生き物であり、「人生の本当の価値」に気づかせてくれた存在だった。見返りを求めない本当の愛。誰かを助けることの価値。マッシモは自分の人生の「欠けていたこと」に気づく。

 彼はハリネズミを通して、「この世のすべての罪のない生き物」を感じ、また「人間によって破壊された自然」を見ているのだ。

 本作はハリネズミの可愛さに気づかされ、また、小さな命の尊さや、その一つ一つの命が集まって存在している地球の美しさ、自然を思いやる気持ちなどを、優しく感じさせてくれた。

『人生を変えてくれたペンギン』の旅行記のような面白さや、『ゴビ』のようなハラハラする展開はないけれど、じんわりと心に沁みる一冊だった。

 さて、興味を持っていただける一冊はあっただろうか。どの実話も、「ただ動物が出てきて、可愛い」だけの作品ではない。動物を通して、「本当に大切なことに気づいた人々」の物語なのである。

文=雨野裾