学歴や職業人生は”性格スキル”で決まるってホント?

生き方

2018/5/31

『性格スキル 人生を決める5つの能力(祥伝社新書)』(鶴光太郎/祥伝社)

 学校の勉強が苦手だったり、高い偏差値を取ることができなかったりして悩んでいる人に朗報だ。最近の研究では学力や偏差値で表される“頭の良さ”だけではなく、むしろ、“内面的なもの”が人生を成功させるために大きな影響力を持つとされているのである。

 内面的なものとは「性格スキル」だ。「世の中、成績や学歴がすべてでしょ」と将来を悲嘆的に捉えて諦めてしまっている人への救いの手となるかもしれない「性格スキル」は子どもだけではなく、大人になってからでも伸ばすことができるのだという。では、誰の人生をも良い方向へと導いてくれる可能性を持った「性格スキル」とは一体どんな能力であるのか。また、実際に性格スキルを伸ばすためにはどのような対策を取ればよいのか。

 そんな気になる「性格スキル」について詳しく知ることができる本がある。『性格スキル 人生を決める5つの能力(祥伝社新書)』(鶴光太郎/祥伝社)だ。著者は経済学博士で慶應義塾大学大学院商学研究科教授をしている鶴光太郎氏。2016年に著した『人材覚醒経済』(鶴光太郎/日本経済新聞出版社)をベースにし、今まで取り組んできた経済学や心理学の研究に基づき、性格スキルが人生へ与える影響について本書で詳しくまとめている。

 性格スキルには“ビッグ・ファイブ”と呼ばれる「開放性」「真面目さ」「外向性」「協調性」「精神的安定性」の5つの要素があるという。そして、この5つの要素で見る性格スキルが仕事のほか、寿命、健康、犯罪など人生のさまざまな結果に影響を与えることが研究で明らかになっているというのだ。

 性格スキルと人生の関わりには、たとえば、男性は「真面目さ」のスキルが高い人ほど年間所得が高い傾向となっているが、女性の所得は「外向性」や「精神的安定性」が大きく影響するといった例がある。また、小学校時代の先生から「真面目さ」「協調性」「外向性」に高い評価を得ていた人ほど中年になってから健康状態が良いという研究結果もあるというのだ。

 ところが、人生のさまざまな側面に影響を与えるスキルであるにもかかわらず、意外と重要視されていなかったりもする。日本では子どもの人生を成功させるために、いわゆる“いい会社”に入れようと考える親は少なくない。そして、そのために子どもを“いい学校”に入れるなど頭の良さを示す「認知スキル」を上げることに力を注ぐ傾向は強い。

 しかし、実際の社会では頭が良いばかりではうまく立ち回れない。社会生活への入り口となる就職活動でも大学の成績が良いから必ず大企業に入社できるとは限らないし、同じ大学出身であれば人物が重視される。

 そうはいっても、人生では学歴が評価の対象となる機会は少なくないのではないかと思う人もいるだろう。しかし、実は学歴を上げること自体も知性に加えて高い性格スキルを持っていることがポイントとなるというのである。

 さて、そんな人生の鍵を握る性格スキルを実際に伸ばすためにはどうすればよいのか。本書では、幼少期、就学期、さらには就職後のそれぞれの時期において、特に成長が期待できるスキルと、スキルを高めるための取り組みについても詳しく書かれている。

 加えて、スキルを伸ばすための具体的な方法の1つとして著者が大学で担当していたゼミでの取り組みや学生たちの実体験も紹介されているため、性格スキルの本質やスキルを得るために重要なことは何かを具体的に知ることができ理解しやすい。

 性格スキルの中には「開放性」のように幼少期の家庭環境による影響が重要となるものもある。しかし、全般的にいえば、年齢の重なりと共に伸ばすことが難しくなってくる認知スキルとは異なり、性格スキルは大人になってからでも伸ばすことができる能力なのだ。だから、たとえば、子ども時代に家庭環境に恵まれていない場合でも大人になってから性格スキルを上げることで人生を取り戻すことができる可能性は十分にあるというのである。人生を成功させるのに誰しも遅すぎるということはないのだ。

 専門性においては“知識の量”、つまりは“頭の良さ”が求められることは否めない。しかし、知識の蓄積は今後、AIでも代替可能だ。これからの長い人生をより充実させたいと思っている人、子どもに良い人生を歩ませたいと考えている親、さらには、学校や会社のレベルを高めたいと願う教育関係者や企業関係者にとって本書はぜひ一読しておきたい本なのである。

文=Chika Samon