売り切れ続出! 愛猫との日々を丁寧に描いた、泣き笑いできる猫漫画

アニメ・マンガ

2018/6/9

『俺、つしま』(おぷうのきょうだい/小学館)

 ふてぶてしい猫が虫を持ちながら、こちらを見ている。Twitter発の大人気猫漫画、『俺、つしま』(おぷうのきょうだい/小学館)は、そんなコミカルな装丁でも猫好きの心を惹きつけている。本書は、擬人化された猫たちと飼い主である「おじいちゃん」(女性)の日常を丁寧かつユーモラスに描いたコミックエッセイだ。

 本書の最大の魅力は、猫という動物を美化していないところにある。物語の主人公である猫のつしま(通称つーさん)は横暴だ。おじいちゃんに向かって「くそじじい」という言葉を吐いたり、上から目線な態度を取ったりもする。

 そして、虫が苦手なおじいちゃんから退治をお願いされても、気分が向かなければ従わない。

 しかし、こうした姿すらも、愛しく思えてしまうのだ。実際、猫という動物にはそんな不思議な力がある。だから、世の中の猫好きたちは喜んで下僕にもなれるのだろう。

 さらに、本書は猫と人間の世界にも一期一会があるのだということを感じさせてくれる。実は、つしまにはおじいちゃんと出会う前、大好きな飼い主さんを失ったという悲しい過去がある。

ニンゲンはいなくなる そして家もごちそうも消える そういうものさ

 飼い主の死後、そんな無情感を抱いたつしまは、やせ細りながら野良猫生活を送っていたが、おじいちゃんと出会い、再び安心して休める居場所を手に入れることができた。

 ふたりの日常は、つしまの気分によって左右されたり、おじいちゃんの猫愛が暴走してしまったりすることもある。しかし、そんな毎日がふたりにとってはかけがえのない宝物なのだ。「ただいてくれたらそれでいい」――本書に描かれているこの言葉は、一生に一度の出会いを大切にしているおじいちゃんが口に出すからこそ、読者の心に深く染み渡るのだ。

■猫たちもストーリーを抱えている

 本書にはつしまの他に、23歳の最年長猫「ズン姐さん」や年齢不詳のオス猫「ちゃー」、雨の日や冬にだけおじいちゃんの家に泊まりにくる「オサム」など、さまざまな猫たちが描かれている。そのため、猫たち1匹1匹の人生にも人間と同じように濃いストーリーがあるのだということを感じさせてくれる。

 例えば、つしまの友達である黒猫「ツキノワ」は昔、ペットショップで粗相をしたとき、周りの人たちに笑われたことが原因で、必要以上に穴を掘り続けてしまうようになってしまった。

 著者が猫の気持ちを憶測しているのだろうが、あながち間違っていないだろう。私たちが人間相手に傷つけられるように、猫だって人間の言動で心に傷を負ってしまうことがあるのではないだろうか。

 世の中には、今この瞬間にも飢えや孤独、不自由さと戦っている猫たちがたくさんいる。そんな猫たちを助け出したり、これ以上トラウマを抱えないように守っていったりすることは、私たち人間にしかできないことだ。「動物にも人間と同じような心があり、毎日を一生懸命に生きている」――そう、ひとりひとりが実感できれば、ツキノワのような想いをする猫も減っていき、動物先進国に近づいていくのではないだろうか。

 笑いあり涙ありの本書は猫を通して、命の大切さを描いている。“いとおしい いとおしいいのち 可愛らしいいのち たくさんのいのち”ラストに記されたおじいちゃんのこの言葉には、これ以上ないほどの猫愛が詰まっている。

文=古川諭香