東京23区は火葬代が高すぎる!? 葬式にまつわる「格差」のハナシ

社会

2018/6/13

『葬式格差(幻冬舎新書)』(島田裕巳/幻冬舎)

 あなたは葬儀の際に葬儀社が提示する費用やプランが適切であるか、正しい判断をすることができる自信をお持ちだろうか。

 そもそも、葬儀費用と一言でいっても祭壇や棺といった式場の準備のお金だけではなく、通夜や告別式での飲食や返礼品に要する接待費用、お坊さんなどに支払う読経料や戒名料などさまざまである。また、宗教や宗派によって式の内容や必要となるものが異なるため金額がわかりにくい。そして、何より葬式というのは状況が状況だけに、つい葬儀社から言われるままに決めてしまいやすく、また、他人と気軽に情報交換できるような話題でもないため、いわゆる一般的と言われている周囲の状況に合わせて行う人は少なくないのだ。

 そんな不明瞭な葬儀の実態を明確に指摘し、現代の日本人と人の葬り方との関わりについて著した本がある。『葬式格差(幻冬舎新書)』(島田裕巳/幻冬舎)だ。意外に知られていない遺骨や納骨の方法、火葬代などの地域格差についても詳しく考察されている。

 さらに、核家族化や近所づきあいの希薄化などで小規模傾向にありながらも、内容が過剰化する葬儀の新たな動きについても紹介されていて興味深い。たとえば、少子化や未婚率の増加で葬祭業に参入するブライダル会社の影響から、参列者を無理やり参加させる“故人の思い出ソングの合唱”や“メモリアルビデオの上映”など、結婚式のように式を盛り上げ、悲しみを強調させる過剰演出も出ているようだ。ほかにもドライブスルー葬やロボット導師なんてものもあるという。

 本書を著したのは宗教学者で作家の島田裕巳氏。東京大学在学中は通過儀礼から見る宗教現象の分析に関心を持ち、東京大学大学院ではコミューン運動の研究を行っていたという。さらに、その後は大学で宗教学の教授として教壇に立つだけではなく、放送教育や遠隔教育の研究も行うなど活動は幅広い。作家活動も盛んで国内外の宗教現象を著した作品だけにとどまらず、宗教学の概念から見る美術や映画などに関する著作も持つ。また、葬式にまつわる本も多く、『葬式は、要らない(幻冬舎新書)』(島田裕巳/幻冬舎)は30万部のベストセラーとなった。

 このベストセラー本では日本の葬儀費用が海外の国と比べて格段に高いことが紹介されている(イギリスで火葬した時と比べると約8倍、アメリカと比べても約4倍)が、本書では海外との差だけではなく、国内でも地域格差があることが明かされている。

 たとえば、葬儀費用。東京23区内にある9カ所の火葬場でも火葬料に格差があるという。瑞江葬儀所(江戸川区)の火葬料は大人1人につき6万800円となっていて、一番安い火葬場と比べると3万円近く差があることは意外に知られていない。また、代々幡(渋谷区)や町屋(荒川区)などの火葬場では火葬炉の前に特別室が設けられていて、貴殯(ひん)館を利用すると35万円かかるというのだ。

 35万円に比べると6万800円なんて安いものだと思うかもしれない。しかし、東京23区は全国でも火葬料が突出して高く、これを安いと感じていることこそ、葬儀費用への麻痺ともいえるのではなかろうか。ほかの都市を見ると大阪市で1万円、名古屋市は5000円、札幌市ではなんと無料なのである。なぜ、東京23区と他の地域との間にこのような格差が生まれてしまっているのか。これについては本書で著者が詳しく考察しているので気になる人はぜひ読んでいただきたい。

 日本の地域格差は火葬格差だけではない。遺骨格差もあるという。日本人は墓参りに執心するなど「骨に執着している」と言われているが、遺族が引き取る遺骨の量は地域によって違うことをご存じだろうか。本書によると東日本ではすべての遺骨を引き取ることが一般的だが、西日本では遺骨量全体の4分の1から3分の1ほどしか引き取られないという。引き取られない遺骨の残りについては火葬場が処理することになるのだが、この遺骨の行く末を知る人は少ないだろう。

 誰しも必ず訪れる“死”。死を迎えた時に行う葬儀は身近な儀式であるにもかかわらず意外と知らないことは多い。当然のように歴史ある儀式として信じられている習慣やマナーが実は意味のないものであることもあるという。地域格差や慣習の本当の意味など、なかなか情報を得にくい葬式について詳しく解説された本書を読み、今一度、亡くなった人にとって一番よい葬り方とは何かについて考えてみてはいかがだろうか。

文=Chika Samon