「勝てばホームズ。負ければワトソン。」名探偵に憧れる女子高生の推理バトル!

文芸・カルチャー

公開日:2018/6/18

『友達以上探偵未満』(麻耶雄嵩/KADOKAWA)

 ミステリ小説の定番の設定のひとつに、超人的な推理で真相を解明する探偵と、その姿を読者目線で語る凡人のコンビものがある。アーサー・コナン・ドイルの『シャーロック・ホームズ』にならい、前者を“ホームズ役”、後者を“ワトソン役”と呼んだりする。こうしたミステリでは、ホームズ役が推理で犯人を言い当て、警察などから「さすが名探偵!」と称賛を浴びる一方で、ワトソン役は、名探偵を引き立てるための残念な推理を披露して、周りの人たちから笑われることもしばしば。もちろん、ワトソン役には事件を解決するための手がかりをフェアに読者に伝える小説上の役割や、変わり者であるホームズ役を世間と結びつける重要な役目がある。しかし、多くの人が憧れるのは、やはりワトソン役ではなく、ホームズ役――事件を華麗に解決する名探偵であろう。

 本作『友達以上探偵未満』(麻耶雄嵩/KADOKAWA)のキャッチコピーは、「勝てばホームズ。負ければワトソン。」。この小説には、ふたりの女子高校生探偵が登場するが、明確なホームズ役/ワトソン役は決まっていない。一段飛ばしに真相に肉薄する直感力を持つ伊賀ももと、推理小説好きで論理力を武器にする上野あお。異なる強みを持つふたりが、共に名探偵(ホームズ役)を目指す物語なのだ。互いにその実力を認めながらも、絶対に相手には負けたくない。なぜなら、真相にたどり着くのは、選ばれし名探偵ただひとりだけなのだから。

 本作は、3つの作品が収録された中編集。第1話「伊賀の里殺人事件」では、ふたりが部活動の取材で訪れた伊賀の里ミステリーツアーで殺人事件が起こる。黒・青・黄色の忍者と、松尾芭蕉のコスプレをした人物が入り混じる、パズル的な趣向だ。第2話「夢うつつ殺人事件」は、学校でうたた寝をしていた美術部員が、生徒の殺害計画を聞いてしまい、ももとあおに相談を持ち掛ける。忽然と消えた声の主は誰なのか? 第3話「夏の合宿殺人事件」は、ふたりが中学時代に遭遇した事件。共に名探偵に憧れる彼女たちの内面に切り込み、その“友達以上探偵未満”な関係が描かれる。それを踏まえた最後の推理合戦には、単なる真相究明以上のカタルシスが待っている。

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 これまで『貴族探偵』(集英社)や『神様ゲーム』(講談社)などで、次々と常識を覆す名探偵を生み出してきた麻耶雄嵩。そんな彼が送り出す新たな探偵は、ポップでかわいいく、それでいて心の中に強い思いを持つ“探偵未満”。彼女たちが本物の名探偵になる日を、いつかこの目で見てみたい…続編、ありますよね?

文=中川 凌