夫婦のこじれは固定観念に縛られ過ぎているから!?「他人」だと思って暮せば「結婚」も悪くないかも…

恋愛・結婚

2018/6/21

『夫婦という他人(講談社+α新書)』(下重暁子/講談社)

 生涯未婚率が上昇する一方で、同性パートナーシップを認める自治体が少しずつ増えるなど、「結婚」や「夫婦」の在り方が大きく変わりつつある日本。2040年には単身世帯が一般世帯の約4割を占めるとも推測されており、「家族」という形態の変化を予感させる。

『夫婦という他人(講談社+α新書)』(下重暁子/講談社)は、従来の「結婚」「夫婦」に対する固定観念を捨て、これからの時代に合った、各々が個人として自立した自由な生き方を提案する。著者は『家族という病』『極上の孤独』などの著作が大きな話題になったベストセラー作家、下重暁子氏。自らの経験を振り返りながら、現在の状況を冷静に分析し、軽快な口調で従来の考え方をばっさりと斬る。テレビ番組でコメントをする時のように、実直な人柄がにじむ説得力のある内容だ。

■「つれあい」との「水くさい」関係

 配偶者のことを「つれあい」と呼び、「水くさい」関係であると述べる下重氏。最初から期待のない夫婦なのだそうだ。「つれあい」は仕事関係の知人で、そこから親しくなって一緒に暮らすようになるのだが、「結婚」という形式にはこだわっていなかった。そもそも、プロポーズがないので指輪もないし、結婚式や披露宴もなし。外で飲むのが面倒になり、下重氏の家で飲むようになって、そのまま引っ越してきたそうだ。手続きとして「結婚」という形を取ったが、実際のところは「気の合う二人が一緒に暮らしている」だけ。「家事は女性が担当する」という考えも存在せず、家のことは得意なほうがやる。二人の場合、料理上手なつれあいが食事の支度をし、下重氏は器を出したりテーブルの準備をしたりするそうだ。お互いに無理をせず、自然に暮らしているのが伝わってくる。

■独立採算制で結婚前とほとんど変わらない生活

 下重氏は、若い頃から結婚のイメージを描いたことがなく、つれあいとの暮らしはゼロからのスタートだった。一緒に暮らすようになっても、自分のことは自分でする。独立採算制なので、自分で稼いで自分で使う。車やマンションなどを共同で買う時には半分ずつ。お互いの生活を尊重しており、結婚前とほとんど変わらないスタイルを維持している。一方で、下重氏の知人には、「私は相手の足の爪も切ってあげる」と話す人もいるとか。下重氏はそういう関係性も否定しない。たしかに、下重氏とは正反対のスタンスと言っても過言ではないが、そこは「人それぞれ」。一緒に暮らす者同士が自分たちで選択し、心地よい関係を築いているのであればなんでもいいと語る。

■結婚しても異性の友人との付き合いをやめない

 本書では、結婚した後も異性の友人を持つことをオススメしている。下重氏にとってつれあいは一番親しい知人の一人で、飲み仲間だった。今でも外へ飲みに行く時などは、お互いの異性の友人が一緒のこともあるそうだ。相手の年齢もバラバラ。確かに、結婚したからと、これまでの友人関係を大きく変えなくてはならないのでは息が詰まりそうだ。

 とはいえ、結婚すると同性であっても今までのようには付き合えなくなることも多い。特に女性でそれが顕著な傾向にある印象だ。なぜだろう? もしかすると、本書でも指摘されている「家庭での役割」を意識するからかもしれない。たとえフルタイムで仕事をしていて、夫が家事に協力的であっても、「家事は自分が頑張らなくては」と思う女性が多いのかもしれない。その結果、家庭の外で過ごす時間が激減してしまう。

 下重氏は、あくまで個人として自立することを大切にしている。相手に期待しないで、自分に期待しなさいと後輩女性たちを叱咤激励する。夫と妻、役割や肩書に自分を無理に押し込むのではなく、ぞれぞれが顔の見える個人として立ち、2本の線が伴走したり、時に交わったりしながら共にあゆんでいく。そんな関係を維持してきた自分たちを例に示しながら、私たちに向かって「あなたはどうしたいの?」と問いかけている。

 それぞれの夫婦に合った形を模索しつつも、本書で提案されているような友人関係を続けていければ、結果として夫婦関係にも良い影響がありそうだ。

 新しい夫婦の在り方を提案しながらも、最終的には「二人にとって良い関係」がベストだと述べる下重氏。どんな場合でも大切なのは、精神的に自立した豊かな生活を送ること。現在「夫婦」関係にある方もそうでない方も、男性も女性も、これからの生き方を考える時に大いに参考になりそうな一冊だ。

文=松澤友子