「女って何しても怒られるし、どこにいても厳しい」“女”であることに疲れた時の処方箋『女って何だ?』

暮らし

公開日:2018/8/5

『女って何だ?』(カレー沢薫/キノブックス)

 20代後半から、女性であることが辛いと思う瞬間が増えた。きっかけは「結婚はまだ?」と繰り返し聞かれるようになったこと。そして結婚後は「子供はまだ?」と尋ねられる機会が激増した。筆者は結婚3年目の30代だが、事情があって子供はいない。夫婦の問題だから、子供がいない理由を、あえて他人に話そうとも思わない。それに恐らく彼らは、子供がいれば「二人目は?」と聞いてくるだろう。果てしない地獄である。

 悪気なく他人の人生を心配する人はどこにでもいる。わかっていても、心配される度に心は擦り切れてゆく。おまけに、歳を重ねる度に女性に求められる役割はどんどん増える。こちとら、若さも体力も精神力も目減りする一方なのに、である。

 そんな「女の辛さ」を笑いと皮肉をもって語り、最終的には心をゆる~く解放してくれるエッセイがある。カレー沢薫の『女って何だ?』(キノブックス)だ。本書は、WEBマガジン「キノノキ」の大人気連載を書籍化したもの。

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 第一部では「サバサバ系」「お局」「スピリチュアル女」など「○○女」というテーマで色々な「女」が紹介されている。

 また第二部では学校、職場、家など、シチュエーション別で女について語っている。

 コミュ障で、本当は「女」ではなく「おキャット様とからあげの話をしたい」という著者が、腕が4本ある上に、背中に漆黒の翼を持っている編集担当と共に、偏見とネット知識と自らの経験を踏まえ、女をやり玉に挙げていく様は大変おもしろく興味深い。

 例えば、スピリチュアル女。このタイプは、引き寄せ、前世、夢占い、宇宙にお願いなど「見えない何か」に頼って生きており、自分とは最も対極にいる存在……と考えてしまいがちだ。しかし、著者はスピリチュアル女の精神構造は、女ほぼ全員の心に同じ部分があると指摘する。

 それは掲げている御旗が「他力本願」と「責任転嫁」であり、心臓に彫ってあるタトゥーが「NO努力」の点である。大変身に覚えがあるので、胃が痛い。

 また「○○女」というのは、干物女がキラキラを目指したり、キラキラに疲れた女が干物になったり、やっぱり個性だと思ってサブカルに行ったりと、割と反復横跳びだということにも触れている。「我々が、傍から見れば地獄の反復横跳びをしているのは、少なくとも今の自分より好きな自分になりたいからだ」という著者の意見には勇気づけられた。

 第二部の女同士の関係では、「女って何しても怒られるし、どこにいても厳しい」という事実が、結果としてまとめられている。

 大人になると、無理に誰かと仲良くする必要は毛頭なく、期間限定の苦行だと思い、しばらく耐える・ダメな場合は潔く逃げる、という選択肢があることにも気づかされた。

 著者は言う。

つまり、生きているだけで文句をつけられるのが女である。
だったらせめて自分だけでも、自分が納得できる生き方を選ぶしかないだろう。(p.251)

 ……全くもってその通りだ。だが、その視点が自分にはなかったので、この一文を見て思わずホロリと涙が出た。“世間”や“他者”から心ないクレームを言われても、せめて自分だけは、女として人生を歩んでいることを誇りに思おう。愛する人や好きなものを大切にして、たくさん笑えるように生きよう、と勇気が湧いた。女って厄介! と思う全ての人に読んでほしい爆笑必須のエッセイである。

文=さゆ