2020年の五輪がTOKYOを退屈でつまらない街にする!? ビジネスチャンスを活かすには

ビジネス

2018/8/5

『NEXTOKYO 「ポスト2020」の東京が世界で最も輝く都市に変わるために』(梅澤高明・楠本修二郎/日経BP社)

 2020年に開催されるオリンピック・パラリンピックを機に、東京が世界で唯一無二の最強の国際都市に生まれ変わるためのビジョンを提示する書籍『NEXTOKYO 「ポスト2020」の東京が世界で最も輝く都市に変わるために』(梅澤高明・楠本修二郎/日経BP社)の冒頭では、次のように語られている。

 2020年の東京五輪・パラリンピックに向けて、日本の首都・東京が大きく変わろうとしています。
 報道によれば、東京五輪に向けて追加で行われる設備投資の金額は、官民合計で実に11兆6000億円に上るそうです。中でも大きな割合を占めるのが湾岸地区などの都心部の再開発の5兆8000億円。都内では急ピッチで様々なプロジェクトが進んでいます。
 しかし、私はこの状況に大きな問題意識を持っています。その概念をひと言で表現すれば、東京が退屈でつまらない都市になりかねない、ということです。

 日々のニュースで、オリンピックを見据えた東京都心の大規模再開発プロジェクトの話は頻繁に耳にする。確かにその経済効果も魅力的ではありそうだ。しかし、渋谷、品川、虎ノ門、大手町、日本橋、芝浦…といった各地域のプロジェクトは、それぞれの街の個性を磨き上げるというよりは、大型施設など物件単体の収益性を確保するような開発になりがちで、結果として似たようなコンセプトのプロジェクトが乱立している状態だと本書は指摘する。言われてみれば、大型オフィスと高級レジデンス、高級ホテルに商業施設や文化施設を組み合わせた複合ビルが、都内のあちこちに出現しているように感じる。

 金太郎飴のような複合施設があちこちに溢れる未来都市、TOKYO――。
 清潔で、安全で、近未来的ではあるけれど、それ以上の面白味はない。そんな都市が、世界の有望な企業を誘致し、卓越した人材を呼び寄せ、多数の外国人観光客を招くことができるでしょうか。

 このように今なお多くの課題を抱える未来都市TOKYOの開発。これに対して、本書では「TOKYO」が世界からどう評価されているのか、過去の1964年の東京五輪の都市開発の例、9.11を乗り越えて発展したニューヨークの例、2012年のオリンピックを機に発展したロンドンの例などが解説され、五輪後、ポスト2020のTOKYOが目指すべき方向性の大枠を語る構成だ。

■街の個性を徹底的に磨く――渋谷のラブホ活用術

 TOKYOの創造性を高めるために最も重要だというのが、「クリエイティブ・クラスター」の形成だ。東京にはすでに、特徴あるクリエイティブ・クラスターがいくつか存在する。渋谷・原宿(ストリートファッション、音楽)、秋葉原(電脳、サブカルチャー)、池袋(舞台芸術、“腐女子”街)などがその代表例だ。

 例えば、渋谷の円山町(道玄坂周辺)のラブホテル街を風紀を守るためにとただ規制するのではなく、ユニークなアートホテルに改装してはどうかと本書は提案する。個性的な外観を生かしつつ、数多くの若手アーティストを起用して、1部屋1部屋をアート作品にすることらしい。原宿から渋谷にかけてはストリートカルチャーの“聖地”である。だからこそ、渋谷駅周辺の巨大再開発だけではなく、既存のストリートとそれを生み出した文化を活性化する「ボトムアップの(下からの意見を吸収し全体をまとめていく)街づくり」を大切にすべきだと本書は説いている。

 私は東京という街が好きだ。それなのに、どこか2020年のオリンピック・パラリンピックを素直に喜べない自分がいるような気がしていた。東京が開発され住みやすい都市になるのは良いことだが、目先の収益性を重視するあまり、均質化され、どこにでもあるようなおもしろ味のない未来都市になってしまうのは御免だ。

 だが五輪の経済効果は凄まじい。2020年を経てよりその先にもさらに続く魅力的な「NEXT TOKYO」を実現するために、本書の提唱する取り組みに注目していきたい。

文=K(稲)