23区内で広がる人口格差の実態…都心集中はなぜ問題なのか?

社会

2018/8/16

『都心集中の真実――東京23区町丁別人口から見える問題』(三浦展/筑摩書房)

 日本の人口分布は、東京都心に集中している。地方の人口はどんどん減っているにもかかわらず、東京都内――特に23区では人口の流入が続いているのだ。人が集まり、モノが集まり、何もかもが都心ばかりに溢れていく。だが、「都心集中」が叫ばれるばかりで、その実態まで見つめることはできないだろう。

『都心集中の真実――東京23区町丁別人口から見える問題』(三浦展/筑摩書房)では、各種データに基づいて東京23区で起こった変化と、迎えている現状について解説している。重要な視点となる指標として、「外国人の人口動態」「地域ごとの平均所得」「出生数の分布」などを示しつつ、そこから見えてくる東京23区の実態を解説している。

 第1章では、23区内における外国人の人口増減のデータから、都内における外国人人口がどんどん増えている状況を明かす。中でも「新宿区大久保」「豊島区池袋」「江戸川区清新町」は外国人街になりつつあるというのだ。おもしろいデータとして、日本に住む外国人といえば中国人や韓国人が多いとされてきたが、今はインド人の流入が多いという点だろう。たとえば、江戸川区においては、インド人のホワイトカラーの比率は日本人のホワイトカラーの比率よりも多いという。ここからわかるのは、かつて単純労働のために海外から訪れていた人が多かった状況は変わり、より高度で専門的な仕事をするために日本を訪れる外国人が増えているということだ。

 第2章では、23区に住む人々の所得に関する分析が行われている。いわゆる下町と呼ばれる地域と、それ以外の地域の所得格差は年々増えているというのだ。これは、住む地区によって業種の偏りや学歴の差が生まれているせいだという。さらに、高齢化の傾向も大きく異なり、高齢化の速さも所得の格差に拍車をかけている。高齢化が激しいのは下町であり、同時に生活保護を受ける人口も増えている。低収入の高齢者が急激に増えたことで、下町の平均所得は下がってしまい、結果として格差は広がり続けている。また、第3章では女性人口の動きから、都内の現状を考察している。23区のうち16区では未婚女性が増加していて、特に新宿区や荒川区などに集中していることがわかる。さらに都内在住の未婚女性の6割が一人暮らしであり、職場に近い場所に住むことを望む傾向があるというのだ。郊外から都心へ流入する女性人口は、都心に「スタイル・高価格・超都会的」な文化をもたらすというのだ。

 最後の第5章では、都心における現状を踏まえた上で、新しい都心の在り方について提言として「新しい住宅すごろくが必要だ」としている。かつて、独身時代に間借りし収入が増えてからアパートに引っ越し、結婚すれば団地に住み、子どもが増えたら一戸建てを持つという住環境の変遷を「住宅すごろく」と呼んでいた。だが、昔は一般的だったすごろくも、すでに実現が難しいだけではなく魅力そのものが失われている。だからこそ、新しい住宅すごろくを考え、そこから都心での暮らしを見つめ直す必要があるというのだ。

 本書は、しっかりとしたデータをもとに、東京23区の現状について、淡々と分析する。しかし、だからこそ偏見のない都心の実像が浮かび上がってくる。大げさに危機感を煽るのではなく、むやみに賛美することもなく、都心集中という現象を正確に理解するための一冊だろう。すでに都心に住んでいる人、あるいはこれから引っ越そうと思っている人が読めば、新しい発見ができるはずである。

文=方山敏彦