「仕事ができること」と「雑談のうまさ」は比例する?

ビジネス

2018/8/21

『最高の雑談力: 結果を出している人の脳の使い方』(茂木健一郎/徳間書店)

 コンピューターの技術革新がすさまじい昨今。コンピューターにとって代わられてしまう仕事や職業の確率をオックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン准教授とカール・ベネディクト・フライ研究員が発表し、世界中で話題となりました。

 2045年にはAI(人工知能)が人間を超える「シンギュラリティー」が起こるともいわれ、AIが本格的に普及していきグローバル化も進んでいく社会の中で求められる力とはなんでしょうか? 語学や特殊な資格などの高いビジネススキル? その答えとして脳科学者の茂木健一郎氏は著書『最高の雑談力: 結果を出している人の脳の使い方』(茂木健一郎/徳間書店)のなかで、人間が生き残っていくためのカギは「雑談」だと答えています。

◆AIが人間に唯一勝てないもの「雑談」

 本書にはAIには決して真似ができない技術として雑談を脳科学の見地から解き明かしています。それでは、いったいなぜAIの時代に雑談なのでしょうか? コンピューターの進化はめまぐるしく、人間を超えるといわれ、すでにAIは将棋やチェスの世界チャンピオンを倒しています。しかし、AIに雑談させるとなると事情は変わってきます。雑談は自分が話したあと相手がどんなことを言うのか、その組み合わせは将棋やチェスの組み合わせよりもはるかに多いものです。仕事の話をしていたのにラーメンの話になったり、「そういえば」とまったく別の話題に出してきたりと、雑談には予測不能という難しさがあります。予測不能な事態に、AIはまだまだうまく対応できません。私たちは普段なにげなく雑談をしていますが、脳科学的にいうと雑談はAIにはなかなか真似できない、とても高度なことなのです。

◆仕事力と雑談のうまさは比例関係にある

 茂木氏は講演をするために日本各地を訪れ、学会に参加するために海外に足を運び、多くの人々と出会うなかで、仕事ができる人ほど雑談がうまいと気づいたそうです。仕事ができることと雑談の面白さには、明確な相関関係があり、これは脳科学的にも解明することができます。茂木氏は仕事ができる人の集中力の特徴はオンとオフの切り替えがうまいことで、だからこそ高いパフォーマンスをあげることができるといいます。オンとオフをスムーズに切り替えて集中するときの脳の使い方と、雑談するときの脳の使い方は似ているため、仕事と雑談のうまさは比例するのです。

◆雑談の主役は聞き手

 これからの時代にも雑談力が必要とされるとわかっても、話すのが苦手という人も少なくないと思います。雑談をするには話し上手でなければならないと考えがちですが、それは誤解だと茂木氏はいいます。なぜなら、雑談は聞き手がいるから成立しています。聞き手が存在しなければ、話し手は独り言をいっているだけ。茂木氏は「聞き手が的確なリアクションをするから、話し手がもっと分かりやすい説明をするようになります。雑談がドンドン面白い方向へ展開していきます」と、気分よく雑談できるかは聞き手によるところが大きいのだと主張しています。的確なリアクションとは、相手の話にウン、ウンとうなずくこと。ほかにも、聞きながら笑顔を浮かべたり、「それって、本当ですか?」と確認したり、「○○って、どういうことですか?」と質問したりします。話すのが苦手でもリアクションをとることならできそうです。

 雑談なんて、暇つぶしのおしゃべり、無駄なモノ、意味がない…そう思っている人も少なくないでしょう。しかし、脳科学的な雑談の意義や効用について知ると、雑談についてのイメージは大きく変わります。未来のために雑談力は身につけておきたいスキル、本書はその教科書になるはずです。

文=なつめ