やっぱり泣きっぱなしで読みました

公開日:2012/3/21

ともしび 被災者から見た被災地の記録

ハード : PC/iPhone/iPad/WindowsPhone/Android 発売元 : 小学館
ジャンル:ビジネス・社会・経済 購入元:eBookJapan
著者名:シュープレス 価格:777円

※最新の価格はストアでご確認ください。

あの大震災から1年が過ぎて、スペインのメディアでも震災特集がいくつも組まれていました。外国メディアならではの視点。外国ならではのシビアな切り口や、独特なカメラアングル。いろんな記事が発表されています。その心底には、やはりあの大災害のときに見せた日本人の倫理観、高い市民意識への深い敬意がベースになった記事が多かったように思います。

advertisement

目立ったのは、やはり一人一人の被災者に近寄った短い記事。スペインの人たちもやはり、あの震災を肌で感じ、たとえ日本ほどの地震国でないにしても、大災害を前にして人生はどうなってしまうのか、その後にどんな風に立ち直ってゆけるのか、そのサバイバルを自分の教訓にしたい。そんな感覚があったのかもしれません。外国メディアでは衝撃的な写真も躊躇なく流されましたが、個人的にはあの数日はニュースに釘付けになったとはいえ、その後あまりの無力感に写真も、テレビも極力見ないようにしていた時期がありました。「対岸の火事」のように思えてしまうかもしれないのが怖くて、震災の報道から逃げていたように思います。

が、地震発生から1年。今ようやく、本当の姿を今知っておくべきではないかという気がしています。微力ながらも復興への協力はもちろんのこと、震災被害やその当時の教訓を風化させないことこそが、個人としてできることではないか、と。震災の関連本もようやく読んでみたい気持ちになり、この1冊を購入。出版社は仙台の編集プロダクション。情報が乏しかった震災地では翌日から、各地の地方新聞社が配達を始めていたといいます。印刷すらもままならないような状況で細々と、そして希望を与えてくれた小さな小さな記事の数々。当時の被災地各地の地元新聞があの状況下で丁寧に拾って書き上げた記事を集めたのがこの1冊です。

読んでいる間、ずーっと泣きっぱなしでした。あの状況で、いかに勇気のある人々が多かったか。いかに奇跡にあふれていたか。生き残った人々がいかに支えあって、助け合って生き延びたか。こういう本を1冊読むと、いかに自分が日ごろ小さいことでくよくよしているのかがよくわかります。地方新聞という性格上、スキャンダラスにも、扇情的にもなりません。とつとつと語られていく、沢山の真実と人間としての尊さ。すごい、すごい。すごい。改めて、生きていることを考えさせられ、勇気付けられます。専門家の小難しい説明もありません。あるのは一市民の、一個人のあの日の生き様。この本を読んで、日本人であることを改めて誇りに思いました。ありがとう。の1冊です。


原発近くに住む親子。放射能を危惧した親は子供を「疎開」させることに

石巻の夏子さんは、ボランティアや救援物資を運んでくれる人たちにどうしてもこのメッセージを届けたいと、電柱に貼った

幼くして亡くなった弟を思いながら、18歳の健人君は鯉のぼりプロジェクトを企画

被災地に悠々とたなびく鯉のぼり (C)SHOE PRESS 2012