性格? それとも発達障害?「うちの子、ちょっと心配」と思ったら…

出産・子育て

更新日:2018/11/13

『新版 発達障害に気づいて・育てる完全ガイド』(講談社)

 あなたは自分のお子さんについて、何か心配なことがありますか。元気がいい、忘れ物が多い、人の輪に溶け込むのが苦手…。お子さんの数だけ性格も長所も短所も、十人十色。それが発達障害であっても、定型発達の子であってもです。

 発達障害の子どもは、平成24年度の統計で約67万人。30人クラスで1~2人に見受けられるという結果です。あなたのお子さんがもしも「育てにくい」「頑固だ」「勝手気まま」など、「ちょっと困っている」なら、もっとお子さんについて調べてみませんか?

 調べるといっても、病院や保健所に行くなど大げさなことではありません。お子さんに発達障害の可能性があるかどうかを、簡単に短時間で知るチェックシートがあるのです。

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 この画期的なチェックシートを開発したのは、臨床発達心理士の黒澤礼子さん。『新版 発達障害に気づいて・育てる完全ガイド』(講談社)にまとめられています。

■子どもの“困った”を知ろう

 チェックシートは、子どもの行動や学習能力について16の項目に分かれています。「対人関係・社会性」「コミュニケーション能力」「不注意」「聞く」「読む」「話す」…など。
 お子さんの行動と学習の様子を、設問に「まったくあてはまらない」から「ひじょうにあてはまる」まで5段階で評価し、項目ごとの平均点を割り出します。平均点が「3」以上の項目は「対策」が必要になります。結果をグラフに書き入れると、その子の“課題”が一目瞭然です。

 上のグラフは、小学2年生のCくんのもの。Cくんは、「すぐにかっとなり暴れる」「トラブルが多い」「すぐ教室から飛び出す」などの問題行動がありました。

 それを裏付けるかのように、「不注意」「多動性」「衝動性」が高く出ています。さらに「教科全般」も突出していることから、学習面にも問題がある可能性も浮き彫りになりました。

 Cくんは、このシートをもとに、臨床発達心理士など専門家と「面会」を数回重ねたところ、家庭環境に問題があり、なおかつADHD(注意欠陥・多動症)が疑われました。そこで家庭や学校での「行動目標」をつくり、そして病院を受診。結果ADHDと判明しました。

 服薬と行動目標を意識することにより、Cくんは落ち着いた生活を送れるようになったのです。

■家庭でサポートできる具体例がたくさん

 本書に掲載されている質問に答えると、子どもの課題が見えてきます。ですが、それだけではありません。発達障害とはどのような症状か、初心者にも分かりやすく最新の見解を解説。また、家庭でできる支援の方法をいくつも紹介しています。

 それぞれの特性に合った、予定や手順などの「情報の伝え方」。落ち着ける「環境のつくり方」。自信を持たせる「成功体験の設け方」などです。家庭でできるサポートを少し紹介しましょう。

イラスト=とりうみ祥子

 学習に身が入らないなら、「学習と遊びの場を分ける」。ひとつの場所は、ひとつの目的と決めた方が集中しやすくなります。食卓で勉強するのではなく、机で、なおかつなるべくものを少なくする。このような環境づくりも大切です。

イラスト=とりうみ祥子

 締め切りがある場合は、時間を「見える化」する。アナログ時計で目に訴える形で示すとイメージしやすくなります。

■チェックシートはあくまで「目安」

 発達障害の入門書としてもとても分かりやすく、最新の情報が満載の本書ですが、注意していただきたい点があります。チェックシートは、発達障害を「診断」するものではない、ということ。

 お子さんを評価した結果、「サポートが必要」という項目が出た場合、速やかに医療機関で正式な診断を受けることを黒澤さんは勧めています。

 サポートが必要な子どもが、医療機関で正式に診断されると、「療育」という、医療ケアと発達に応じた教育を受けることができます。するとお子さんが劣等感を持つことや自己評価を下げることを食い止められます。

 周囲からは問題が見えなくとも、本人は日常生活で「困っている」ことが多いので「療育」もぜひ視野に入れてみましょう。

「この子は自閉スペクトラム症だ」「ADHDだ」とレッテルを貼ることではなく、「周囲の支援が必要」ということを、確認するツールが本書です。
「発達障害」を正しく知り、子どもの成長を手助けすることで、親の「困った」が改善されることでしょう。そして本当に「困っている」のは子ども本人だと気づくでしょう。

文=武藤徉子