忙しいのに儲からないクリーニング店を救った、「トヨタ式5W1H思考」って?

ビジネス

公開日:2018/9/21

『トヨタ式5W1H思考』
(桑原晃弥/KADOKAWA)

 忙しいのに成果が出ないとき、知ってほしいユニークな課題解決法がある。トヨタ式5W1H思考だ。5W1Hというと、普通は「いつ(When)、誰が(Who)、どこで(Where)、何を(What)、なぜ(Why)、どのように(How)」だが、トヨタではなんと、「なぜ(Why)、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、どのように(How)」だという。『トヨタ式5W1H思考』(桑原晃弥/KADOKAWA)から一例紹介する。

「もっとがんばる」では解決できない

 忙しいのに成果が出ないとき、「もっとがんばらなきゃ」と気合を入れ直す人は多い。ところがトヨタ式5W1H思考では、「がんばる前に、なぜ忙しいのか、本当の原因を突き止めよう」とする。「忙しいのは仕事が多いから!」で終わらせないのだ。

 例として、クリーニング店A社の話が載っている。クリーニング店は毎年、衣替えのシーズンになると大量の洗濯物が持ち込まれる。A社は「翌日仕上げ」をうたい、徹夜で仕事をこなしていた。ピークに合わせて人を雇い、設備も大型にした。

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 しかし、ピークを過ぎると人も設備も過剰になり、とうとう業績が悪化する。「なぜ自分たちはお客さまのためにこんなにがんばっているのに儲からないのか?」と疑問に思ったA社トップは、トヨタ式のコンサルタントに相談したという。

 コンサルタントがA社の仕事のやり方を調べ、「繁忙期とそれ以外の時期の仕事量のムラが大きすぎる。だから設備や人でムリをして、結果的にムダが出て、経営を圧迫している」と結論づけた。ところが、それに対するA社トップの答えは「それはわかるが、クリーニングの仕事はシーズンごとに山谷があって当たり前」というものだった。

 たしかに繁忙期がある職業では、トップシーズンに忙しくなるのはどことなく「嬉しいこと」にすらなっていたりする。しかし、トヨタ式のコンサルタントはこう質問したという。

「本当に、お客さまは翌日仕上げを望んでいるのですか?」

 5W1H思考で「なぜ」を繰り返した結果、「なぜこんなに忙しいのに儲からないのか?」の本当の答えが見えてきたのだ。

「こだわり」がムダを生んでいる可能性

【WHY】なぜ忙しいのに儲からないのか?
A.トップシーズンだけのための設備投資が回収できない

【WHY】なぜトップシーズンはそんなに忙しいのか?
A.衣替えで大量の衣服が持ち込まれるから

【WHY】なぜ大量の衣服が持ち込まれるとそこまで忙しいのか?
A.翌日仕上げするには徹夜も当たり前だから

【WHY】なぜ翌日仕上げにこだわるのか?
A.自社の自慢のサービスだから

【WHY】なぜ自慢なのか? 衣替え期の翌日仕上げをお客様は本当に望んでいるのか?
A.お客様が必ずしも望んでいるかといわれれば…そうではないかもしれない

 たとえば春に冬物のダウンをクリーニングに出すお客様にとって、次にダウンが必要なのは次の冬。A社は「お客様のために」翌日仕上げにこだわっていたが、「本当にお客様が望んでいるのか」と問われると「もちろん」という自信はなかった。実は、自分たちが決めた納期に自分たちが振り回されていたのだ。

 以来、A社はお客さまの希望の仕上がり日を尋ねるようにしたという。自分が「当たり前」と思っていることの中に、忙しさを生む「ムダ」が潜んでいる可能性は大いにあるだろう。がむしゃらにがんばる前に、トヨタ式5W1H思考で「本当の原因」を突き止めたい。

●著者紹介●
桑原晃弥(くわばら・てるや)
1956年、広島県生まれ。経済・経営ジャーナリスト。慶應義塾大学卒。業界紙記者などを経てフリージャーナリストとして独立。トヨタ式の普及で有名な若松義人氏の会社の顧問として、トヨタ式の実践現場や、大野耐一氏直系のトヨタマンを幅広く取材、トヨタ式の書籍やテキストなどの制作を主導した。著作も多数。

この記事で紹介した書籍ほか

トヨタ式5W1H思考 カイゼン、イノベーションを生む究極の課題解決法

著:
出版社:
KADOKAWA
発売日:
ISBN:
9784046023803