「全米最優秀女子高生」を育てた母親が実践!「自らやる子」を育てるために、今日から家庭でできること

出産・子育て

公開日:2018/9/17

『世界最高の子育てツール SMARTゴール』(ボーク重子/祥伝社)

 子どもを持つ親なら誰もがよい子育てをしたいと思っているのではないだろうか。昔から子育て法に関する本は多かったが、近年は「やりぬく力」や「コミュニケーション能力」を重視するものが多いように感じられる。ひと昔前は学力偏重の傾向が強かったことに比べると流れが変わってきているようだ。2017年に「全米最優秀女子高生」を受賞したスカイ・ボークの母、ボーク重子氏の著作『世界最高の子育てツール SMARTゴール』(ボーク重子/祥伝社)もそうした今時の子育て法に関する本である。

 本書の内容を一言で言ってしまうと「ビジネスの考え方は子育てにも応用できる」というものだ。ビジネスの世界では、ビジョンや目標の設定、目標を達成するための計画、計画を実行するための行動計画を作ることは当たり前のことである。本書では、そうしたビジネスの手法を子育てにも取り入れ、とりわけ子ども自身に計画を作らせることの重要性を説いている。小さな頃から「何のために」という目的意識を持たせ、小さな成功体験を積み重ねることで、大きな成功もつかめる人間になっていく。

 子どもの成長に影響を与えるのは親だ。多くの家庭では母親が最も影響力を持っているかもしれない。子どもの才能を引き出すことができるかどうかは親のタイプにかかっている。娘が生まれた頃のボーク氏は自分に自信がなかったという。娘には自分のようになってほしくないという思いから、さまざまな教育法や子育てに関する研究を調べた。その結果、「親の生きる姿勢や子どもへの親の態度が、子どもの人生を大きく左右する」ことが分かったという。

advertisement

 子どもを育てるのは親なので、子どもを成功に導きたいと願うなら、親自身がベストタイプの親の特性を身につけることが必要だ。そう感じた著者は目標達成メソッドである「SMARTゴール」を活用して自分自身のキャリアも積み上げていくことを決心した。どのように著者がキャリアを積み上げていったかを少し紹介したい。

 それまで人からは「いつかギャラリーを開きたいとずっと言っているボークさん」といわれていた著者。2004年には念願のギャラリーをオープンしアートを通じての社会貢献活動をおこなってきた。その実績が評価され2006年には当時、上院議員だったオバマ大統領やワシントンポストの副社長らとともにワシントニアン誌の「ワシントンの美しい25人」に選ばれるという快挙を達成。その後はギャラリー業からアート業界のコンサルティング業に移行し、子育て、キャリア構築、ワークライフバランスに関する講演などを日本でもおこなっている。

 本書で紹介されている子育て法で興味をひかれたのは、アメリカ人の発想の仕方に関する部分だ。日本の家庭では「えらくなれ」「一番になれ」「金持ちになれ」など自己実現のための教育をすることが多い。一方、アメリカのエリート家庭では「自分よりも大きな何かのために」という目的意識を持たせる教育をしているという。自己実現の先に何があるのか。社会の一員として自分に何ができるのか。子どもは小さな頃から自然に「私は××のために××になって××したい」という発想を持つようになるのだそうだ。

 自分一人が満足して終わりの夢ではなく、多くの人とわかち合うことのできる夢を持つようにトレーニングをする。それが本書で語られる「SMARTゴール」の考え方だ。もしかすると「子どもがなんでも自分で考えてできるようになってしまったら、さみしい」と感じる人もいるかもしれない。

 著者はなぜこのような子育て法を実践するのか。ボーク氏は子育ての目的は「子どもの自立」にあるという。親の仕事は子どもが最適なかたちで自立するのをサポートすること。そう考えれば子どもが自分で物事を進めることができるようになるのは喜ばしいことである。そのような子どもに育てたいならまずは親自身が自分を育てられるようになることが肝心だ。

 本書は子育ての本であると同時に、ビジネスや自己啓発の本でもある。

文=いづつえり