観光じゃない“インサイダー”旅行って!? 大人気「台北」最新トレンド

暮らし

2018/9/29

『ネイバーフッド台北』(吹田良平:監修/トゥーヴァージンズ)

「ご近所」や「お隣」という意味を持つ「neighborhood(ネイバーフッド)」。『ネイバーフッド台北』(トゥーヴァージンズ)は、台北の7つのエリアで発信源となっているショップの紹介を軸に、ショップとご近所同士の繋がりを絡めつつ、「どうして素敵なお店ができる面白い街になったのか」ということを丁寧にひもといてくれます。一見、旅行ガイドのようですが、観光としての台北ではなく、俯瞰的に台北を捉えて関わりたい人のための本です。

 監修を務める吹田良平氏は、都市空間の開発事業などを行いながらポートランドの都市再生事例に関する著書『グリーンネイバーフッド』を執筆するなど、街と人との繋がりを掘り下げるスペシャリスト。吹田氏いわく、観光客ではなく「インサイダー」向けにこの本を編集したとあり、この聞き慣れない「インサイダー」とは、知らない旅先でも知り合いと一緒に旅するかのように心の感受性を開いて、同じような世代と心と心の繋がりができる人のことです。吹田氏の言葉を借りるならば、「その街の人々に同期できる人」が、インサイダーとのこと。地方のなんでもない日常を愛おしむローカルな旅をしている人も、インサイダーということになるでしょう。

『ネイバーフッド台北』は大型本なのでとても見応えがあり、ページをパラパラとめくっていくと、コーヒーショップ、雑貨店、文具店や菓子店など、様々な業種のショップのディスプレイや空気感が、写真と文章でテンポよく構成されています。そのなかでも、やはり目に飛び込んでくるのは、そのショップをつくる「人」の姿です。

 いわゆるビジネスマンの姿をしている人はここにはいません。男性も女性も、ラフなシャツやワンピース姿で、リラックスした表情で登場しています。インタビューは自分のビジネスの話ではあるのですが、街との繋がりやこれからの展望、大事にしていることなどを、その人の言葉で語っていることで、より私たちと近く感じ、まるで「インサイダー」になったかのような感覚になります。

 登場するショップのどれもが洗練されているだけでなく、自分なりの個性と信念をもっていること、時代の流れに沿ってビジネスを切り開いていることなどがインタビューに凝縮されているので、いつかショップをやってみたいなと思う人も興味深く読めるはず。

 スペシャリティコーヒーやクラフトビールといった日本と同じムーブメントが起きているので親近感がもてるほか、モダンなショップが日本統治時代の建物をリノベーションしていたりと、台北ならではの歴史と新しいものが混ざり合う独特の文化にも注目です。

 台北で起きているムーブメントが気になっている人はもちろん、台北に行かずとも、「インサイダー」とはどういうことか、これからの時代に必要なことは何かを考察させてくれる一冊です。

文=長祖久美子