カラスはアリを浴びて体をきれいにする!? 驚きの“トリ”ビア

暮らし

公開日:2018/10/4

『トリノトリビア 鳥類学者がこっそり教える野鳥のひみつ』(川上和人:著・監修、三上かつら・川嶋隆義:共著、マツダユカ:マンガ/西東社)

 鳥カフェに鳥フェス、さらにはインコアイスに「インコクサイダー」(インコ臭のするサイダー)など、抱腹絶倒系商品までが飛び出すほど、近年、鳥がブームだ。

 どうせなら鳥そのものにもっと関心を寄せたい、そんな方におススメの1冊が『トリノトリビア 鳥類学者がこっそり教える野鳥のひみつ』(川上和人:著・監修、三上かつら・川嶋隆義:共著、マツダユカ:マンガ/西東社)だ。

 スズメ、ツバメ、カラス、ハト、カルガモほか日本の身近な約60種の野鳥が登場し、83のトリビア情報が楽しめる本書。1つのトリビアは、右ページに4コママンガ、左ページに専門家の文という見開き構成で解き明かされていく。読みやすいだけでなく、マンガも解説文もユーモアセンスたっぷりで、笑いながら知識が身に付けられる。まさに子どもから大人までが一緒に楽しめる1冊だ。

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■カラスはアリを浴びてきれいになる!?

 カラスが賢いのは有名な話。でも、アリを浴びる「蟻浴」なんて言葉は本書で初めて知って驚いた。

「アリの巣の上にどっかと座り込み、全身にアリをたからせ、ときにはアリをくわえたまま羽毛をすいて、まんべんなくこすりつけます。これは、アリが攻撃のために出す蟻酸などの化学物質を利用して、寄生虫を駆除する行動だと考えられています」

 カラスは他にも、銭湯の煙突などのてっぺんにとまり、煙で羽をいぶすような行動もとるそうで、それも寄生虫駆除対策のひとつと考えられているそう。ちなみに、蟻浴中のカラスがときおりびくっと動くのは、アリに噛まれて痛いからなのか、あるいは恍惚感から震えているのか、「それはカラスにしかわからない」と、著者は正直に告白している(笑)。

 また別のトリビアでは、汚れたスズメが砂風呂に入ることも教えてくれる。その光景を見たい人に著者は、「ベランダのプランターに乾いた土を入れておけば、スズメが一風呂浴びにやってくるかもしれません」とアドバイスしている。いずれにせよ鳥たちは、人間が思う以上に清潔好きで、ボディケアを欠かさない生き物なのだ。

■オシドリ夫婦、じつは毎年相手が違うんだって

 仲睦まじい夫婦のことを、誰が呼んだのか「おしどり夫婦」と呼ぶ。しかし本書によれば、実際のオシドリ(カモの仲間)たちの間では、「毎年パートナーを変えます」というのがスタンダード。

 産卵後はメスが巣作りからヒナの面倒までの一切を行い、オスは育児にもまったくのノータッチで、次の繁殖相手を探しに行くそうだ。

 ちなみにタンチョウ、ハクチョウ、ハクトウワシ、フクロウ、アホウドリ、ペンギンなどは同じつがいで一生添い遂げる「おしどり夫婦」なのだそう。

 本書には他にも「カワセミは魚をさしだしプロポーズ」「キツツキは大音量で愛を叫ぶ」「キジバトはグルグル回って愛を伝える」「モズはモノマネでハートを射抜く」などの、オモシロ求愛行動トリビアが紹介されている。

 また、夜にモノが見えにくくなることを「鳥目」と言う。しかし本書の「鳥の目はあんがい鳥目じゃない」と題したトリビアでは、夜行性の鳥が多いことなどを紹介し、「本当に鳥目なら多分もうそろそろ(鳥類は)絶滅しています」と指摘。「いやはやとんだ濡れ衣です」と著者は締めくくっている。

 本書を片手にぜひ、近くの公園へ行ってみてほしい。そこで見かける野鳥たちの、それまでまったく気にしなかった行動の数々が、違うものに見えてくるはずだ。そして野鳥たちがより身近に感じられ、その存在を愛さずにはいられなくなるはずである。

文=ソラアキラ