子どもの成長のチャンスを奪うのも親! 5万組の親子を導いた塾長の「ちゃんと失敗する子の育て方」

出産・子育て

2018/10/8

『ちゃんと失敗する子の育て方』(高濱正伸、西郡文啓/総合法令出版)

 失敗は、成功するための大切な過程だ。エジソン、ダーウィン、アインシュタイン……挙げればキリがないほどの偉人たちが失敗と苦労を重ねながら偉大な功績を残してきた。失敗をしないことこそが、失敗なのだ。

 しかし現在の教育は、失敗する場を失っている。昔から日本社会では、効率的で失敗しない人材が求められてきた。そのためその人材を生み出す教育が学校で行われてきた。

 テストで良い点を取る勉強、志望校に受かるための受験。これらは効率よく成功する方法を学ぶことであり、“失敗を乗り越える学び”はない。前者を学んだ子どもたちは、やがて大人になり、会社で求められる“効率よく成功する歯車”として働く。

 今までの時代ならば、このままで良かったのかもしれない。しかし時代は変わった。

 ネットの発達がGoogleやAmazonなどの大企業を生み出し、人工知能をはじめとする先端技術が産業に革新をもたらそうとしている。これらの新しい波に旧来の人材は乗れない。求められる能力が変わりつつあるのだ。

 10年後の未来さえも予測できないほど“変化が激しく答えのない時代”になった今、未来を生きる子どもたちは“失敗を乗り越える方法”を学ばなくてはならない。

『ちゃんと失敗する子の育て方』(高濱正伸、西郡文啓/総合法令出版)は、失敗の大切さを親に説き、失敗をしながら子どもが成長する子育ての方法を紹介している。

■親と学校教育が子どもの失敗を奪っている

 成功者や一流のアスリートたちでさえ、過去の挫折や苦労を乗り越えた先に、今を生きている。その多くは子どもの頃や若い頃に逆境に遭い、それを乗り越える経験を積み重ねてきた。壁を突き破る成長を日々繰り返してきたのだ。

 一方で失敗を経験できなかった人々は逆境に遭ったとき、どうしていいか分からずただ苦しむ。挫折を乗り越えられずに逃げ出すこともある。

 子どもや若いうちに経験する“失敗”は、大舞台に立つ社会人になったとき、困難に立ち向かう“対応力”という生きる財産に変わる。

 この対応力は、未知なる変化が待ち受けるこれからの時代に不可欠な能力だ。先述の通りこれからは、何が成功で何が社会から必要とされるか分からない。それを模索し挑戦し続ける人材が必要になる。そのために変わり続ける時代や社会に対応する力が求められるのだ。

 失敗こそが、子どもたちの一生の財産となる対応力を育てる。しかし、今の教育現場や親たちは、子どもから失敗を奪い続けている。

 現在の学校教育は、“すでにある答えを正しく効率的に求める方法”を教えている。子どもたちは、自分で考え正解を導き出す“自分のやり方”ではなく、“正しいとされているやり方”を学んでいるのだ。失敗を排除するこの教育では対応力は育たない。

 また、親も子どもから失敗の機会を奪いがちだ。子どもがチャレンジしようとしていることに「危ない!」と口に出したり、自分で決めさせるべきことについ過干渉になったり、子どものことを想っての行動だろうが、長い目で見ると成長を奪うことになる。

 社会人になってからの失敗は、子どもの頃の失敗と大きさが違う。会社でミスをすれば同僚に迷惑をかけ損害を出す。信頼を失って人間関係が壊れることもある。そのぶん心に負う傷も大きく、挫折して殻に閉じこもるかもしれない。

 子どものために、今は失敗する機会を与えなければならない。

■子離れが子どもの自立を促す

 では、具体的にどのような教育をすればいいのだろう。本書の著者であり、5万組の親子を導いた「花まる学習会」代表の高濱正伸さん、花まるグループ「西郡学習道場」代表の西郡文啓さんは、こう述べている。

親が子どもと離れてあげないと、子どもは自立できません。

 小学校の高学年になると、学校教育の一環で誰もが林間学校や宿泊合宿に挑戦する。親元を離れ、同じ学年のみんなと数泊の集団生活に挑戦するのだ。

 快適な環境が約束された家とは違い、自分で寝起きして、友達とご飯を作って食べて、授業を受けて、そして夕飯を食べて寝る準備をする。この過程でどれだけ小さい失敗を重ねているだろう。「自分でどうにかする」自立した生活を経験ことで、その合宿から帰ってきた子どもたちは親が目を見張る劇的な成長を遂げる。

 こういった経験を学校だけでなく、祖父母や友達の家に一人で泊まらせるなど様々なところでさせてみよう。すると子どもたちは自然と自立を意識するようになる。

 また、子どもが家にいるときも対応を変えてみよう。勉強の口出しを極力しない。家事の役割分担を決めて子どもに任せる。何かを決めるときは「こうしなさい」と親が主導するのではなく、「あなたはどう思う?」と子どもに自主性を問う。

 初めは、子どもはもちろん、親の実践も難しいかもしれない。つい口出ししたり「こうしなさい!」と言ってしまったり、うまくいかないことが多いはずだ。少しずつでいい。できるところから始めてみよう。

 時代が変われば、必要な教育も変わる。これからの時代を生きるならば、その子どもたちはそれに応じた教育を受けるべきだ。

 しかし親だって完璧じゃない。子育ては失敗して当たり前。だが、子育ての素晴らしいところは、何度失敗しても明日があることだ。また明日、子どもに笑顔で一生懸命接すれば、いつかきっと失敗が成功に変わる。

 子どもの成長は親の喜び。だからこそ必要以上に神経質になるのも仕方ない。けれども、ときには子どもから離れることが何より子どもの成長につながることを思い出してほしい。

 子どもだって、自分の人生を生きている。親が子どもの人生に口を出しすぎるのは、失礼にあたるのではないか。

文=いのうえゆきひろ