定年してからわかること…。人生・家族を想うお父さんの気持ちいっぱいの温かな本

小説・エッセイ

2012/3/28

定年ゴジラ

ハード : PC/iPhone/iPad/Android 発売元 : 講談社
ジャンル: 購入元:eBookJapan
著者名:重松清 価格:648円

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こんにちは、渡部由佳です。自分のお父さんが還暦近い歳になってきたからか、最近『定年』という言葉を身近に感じます。テレビで「定年後、何もすることがなくて悩む人が多い」なんて聞いてしまうと、「私のお父さんは大丈夫かなぁ~。」って心配になったり…。

今回読んだこの本『定年ゴジラ』は、まさに「定年後どう過ごすか?」で悩む人たちのお話です。

主人公・山崎さんは、長年勤めた銀行を定年退職したばかり。自由で気ままな第二の人生が始まると思っていたけれど、今まで会社一筋でやってきた山崎さんは自分が何をしていいのかわかりません。特にこれといった趣味もないし、自然の多い静かな街だと気に入っていた『くぬぎ台ニュータウン』も、定年してやることがない今となっては、なんの娯楽もないつまらない街に思えます。仕方がないので日課の散歩で時間を潰す毎日です。そんなある日、同じく定年した仲間たちと出会います…。

この作品は、定年を迎えたお父さんたちの日常が描かれています。タイトルにゴジラとありますが、別にゴジラが登場して暴れる…なんてことが起こるわけではありません。ごくごく普通の日常です。でも、そんな日常の中で、今まで仕事に明け暮れて見逃してしまったことの大きさに戸惑い、悩み、それでも自分たちの人生を前向きに生きていこうと頑張る山崎さんたちの姿には、社会で働くお父さんたちからのメッセージがたくさん詰まっているように思いました。

定年してから想う『家族の大切さ』。今までは仕事に追われて気がつけなかったけど、毎日会社で働けたのは家族がいたから。そして、その家族を支えてきたのはまぎれもなく父である自分。今までどんな想いで働いてきたのか、生きてきたのか…30代の作者が書いたとは思えないほどのリアルなお父さんたちの気持ちに、胸がジーンとなります。

定年を迎え、家族と過ごす時間が増えたからこそ直面する家庭の問題や悩みを取り上げつつも、全体的に家族の温かさがいっぱいの作品。クスっと笑えて、ウルっと泣けました。定年後の話なので、自分というよりは自分のお父さんと重ねて読むことが多かったのですが、もっと年齢を重ねれば感じるものも違うと思います。何度も読み返したい本です。

若い人も、還暦近い人も、男も女も関係なく楽しめる、幅広い人に読んでもらいたい、そんなステキな1冊です。ぜひ手にとってみて下さい。


一話ごとに完結した、連作短編集になっています

『定年ゴジラ』、そのタイトルの理由がここに…

今は亡き母への想いがあふれたシーンでは、涙が止まりませんでした…

『余生』=『余った生』

『夢』とは…? この本には、いろいろ考えさせられる内容がたくさんあります

「今度は君たちの番だ。君たちが社会に出て、家庭をつくって、生きていくんだ。」私の一番好きな言葉 (C)Kiyoshi Shigematsu 1998