【不思議すぎる人体のしくみ図鑑】人間は昔、三つ眼だった!?  親知らずは、人体に残る進化の痕跡?

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公開日:2018/10/13

『不思議すぎる人体のしくみ図鑑』(坂井建雄/宝島社)

 知っているようで、意外と知らない人体のしくみ。どうして、人間には尻尾が生えていないのか。どうして、親知らずが生えてきたり生えてこなかったりするのか。進化の秘密から人体の不思議を解き明かす『不思議すぎる人体のしくみ図鑑』(坂井建雄/宝島社)では、詳細な人体図とともに紹介している。

■親知らずは、人体に残る進化の痕跡?

 奥歯のあたりが、むずむずしてなんだか痛い。歯科医を受診してみたら、親知らずが生えてきていた…。抜歯をすすめられることが多い親知らずだが、これは生える人もいれば生えてこない人もいる。いったい、この違いはなんなのだろうか。

 人間の歯は32本あるといわれ、1本ずつ生えてくる時期が違っている。6歳ころに第一大臼歯、12歳ころに第二大臼歯、そして第三大臼歯はずっと遅れたころに生えてくる。遅れて生えてくる第三大臼歯は、親の手を離れた後に生えてくることから「親知らず」と呼ばれている。この第三大臼歯は、縄文時代では80パーセントの人が4本とも持っていたが、古墳時代では60パーセントに減ったという。人類は硬いものを咀嚼するために顎や歯が発達したが、文明の発達とともにそれは退化していった。硬いものを食べる機会が減っていき、人類には第三大臼歯は不可欠なものではなくなったのだ。現代では、親知らずが生えない人のほうが多数派となっている。親知らずが生える人と生えない人の違いは、進化の過程で親知らずを必要ないと判断した結果だといえる。

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■人間は昔、三つ眼だった!

 漫画やアニメなどでよく目にする、三つ眼キャラ。「第三の目を開いて覚醒!」なんてことはファンタジー世界だけのことかと思いきや、人体に残るある器官から、そうではないことがわかっている。

 私たちのご先祖様はもともと三つ眼であり、その名残が私たちの身体に残っている。その証拠が目の奥、脳の中央にある「松果体」である。「松果体」はメラトニンと呼ばれるホルモンを分泌し、睡眠を促す作用をしている。昼は活動、夜は睡眠と、人間の生活リズムを作る「体内時計」とも呼べる器官。現在では大きな脳に遮られ目にまで発達しなくなったが、かつては人間も頭頂部に第三の眼を持っていたのだ。ちなみに、現在でもイグアナやニュージーランドにいるムカシトカゲなどには、三つ眼が残っている。

■なぜ、人間に尻尾がないのか?

 魚の尻尾は泳ぐためにあり、は虫類は尻尾で体全体のバランスをとるために尻尾が必要だ。木の上で暮らすサルは第五の手としてぶら下がるための道具に、ウシはハエなど虫を追いはらう道具に尻尾を使っている。多くの動物には尻尾があり、人間にも尻尾があれば便利そうなのに、どういうわけか人間には尻尾がない。人間は垂直に座ることから尻尾を退化させたという説があるが、オナガサルも同様な座り方をするから、それが原因とは断定できない。ほかにも諸説あるようだが、実際のところ人間から尻尾がなくなった理由はいまだにわかっていない。もし、尻尾がない理由を解明することができれば、世紀の大発見になるかもしれない。

 長い長い歴史を経て、人間はちょっとずつ変化している。環境にあわせて必要なものは発達し、不要なものは退化していく。私たちの身体に残ったかつての名残から、人の進化の過程が見えてくるが、まだまだわかっていないことも多い。当たり前のようにあるものなのに、不思議がいっぱいつまった人体。本作を読めば、常識が覆り、謎がさらに深まること間違いないだろう。

文=なつめ