「私、いつまで産めますか?」 独身でもできる「卵子凍結保存」という新しい選択肢

恋愛・結婚

公開日:2018/10/22

『私、いつまで産めますか? 卵子のプロと考えるウミドキと凍結保存』(香川則子/WAVE出版)

 2013年秋、卵子凍結保存の新しいガイドラインが発表され、「健康」な「独身女性」でも卵子を凍結保存させる医療行為が受けられるようになった。パートナーがいない女性などが、将来のために「未受精」の卵子を今のうちに保存できるようになったのだ。

『私、いつまで産めますか? 卵子のプロと考えるウミドキと凍結保存』(香川則子/WAVE出版)は、生殖工学博士の著者が、赤ちゃんの産みどきや卵子凍結保存について詳しく解説した1冊だ。著者は卵子凍結保存のセミナーやカウンセリングを行い、これまで多くの女性の悩みに向き合ってきた。

 卵子凍結保存には「保存さえしておけば大丈夫」「簡単にできる」という誤解が存在するという。妊活は、時間と費用をかけたとしても、全ての女性がうまくいくとは限らない。また当然リスクは存在する。専門家の手ほどきで正しく現状を知ることが第一歩だ。

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 子どもは、25〜34歳のあいだが最も産みやすく、35歳以上は産みにくくなるという。25歳という年齢では、体外受精での妊娠率は約30%だ(自然妊娠となると、気付かずに流産していることもあるので統計が取れない)。妊娠率は24歳から37歳までの13年をかけて10%落ち、そこから41歳までには、さらにマイナス10%となる。20代のころには「3回チャレンジして1回」だったのが「10回トライして1回妊娠できるかどうか」にまで落ち込む。

 だからといって「なんだ、妊活1年以内には妊娠できそう」と思うのはまだ早い。「妊娠」=「出産」ではないという。やはり、「流産」という現象を無視することはできない。上記の「妊娠率」から産めなかった人を差し引いた数字「出産率」を重視する必要があるというのだ。25歳の「出産率」は20.9%だが、そこから13年かけて半減し、38〜39歳で10%、そして41歳では5%となる。

 妊活をした女性たちに注目を浴びているのが卵子凍結保存だ。「受精卵」の凍結保存はよく知られているが、「未受精卵(卵子だけの凍結)」はこれまで一般的ではなかった。眠っている卵子の時間は止まり、老化もしない。クリニックによって凍結保存の手順は違うが、著者が所長を務める卵子バンクでは以下のようになる。

1.カウンセリングを受ける 1時間〜
2.提携先病院を受診する 1時間〜
3.卵巣を刺激し、排卵を誘発する 2週間〜
4.採卵手術 半日〜1泊2日
5.卵子を凍結し、保存する

 卵子凍結保存は、自費診療で支払われることになる。検査や薬、手術や入院を全て合わせて費用は50万円ほどかかる。そこに、毎年の保管料が卵子1個につき1万円かかる。凍結保存に興味がある女性は、かかる時間や手間、費用についてじっくり考える必要があるだろう。

 著者のカウンセリングルームには、悩みながらも産みたいという女性たちが訪れるそうだ。妊娠は自分の人生を問い直すきっかけになる。金銭的に今すぐは考えられなかったり、仕事のことを考えて踏みとどまっていたり、子どもが欲しいがパートナーがいなかったりなど、産みたくても産めない事情がある女性たちがいる。その一方で年齢的な問題に焦る人たちも多いだろう。本書が、自分の現状を理解し、新しい選択肢を作るきっかけになることを祈る。

文=ジョセート