パートナーを亡くしてからどう生きる? 「没イチ」に備えて今のうちからできること

暮らし

公開日:2018/11/27

『没イチ パートナーを亡くしてからの生き方』(小谷みどり/新潮社)

 ここ数年で「終活」という言葉を耳にするようになってきた。自分の人生をどのように終わらせるかを考え、プランニングしていく活動のことだ。

 ところが、自分の人生の終わらせ方は真剣に考えているのに、自分の配偶者が死を迎えたときにどうしたらよいかということに気を配る人はあまりいないようである。「自分が死ぬより、大切な人に先立たれるほうが怖い」と思っている人が多い※にもかかわらず。

 そこで、自分にとって大切な配偶者に先立たれてしまったときに、どのようにして立ち直り新しい生活を始めたらよいのか、あるいはひとり残されることになる前の心づもりや準備、ひとりになった後の終活のしかたを網羅した書籍『没イチ パートナーを亡くしてからの生き方』(小谷みどり/新潮社)を紹介したい。

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※本書の著者がおこなったある調査結果によるもの

■配偶者の死後に自分の生活を立て直せるかがカギ

 配偶者に先立たれた後、何をするにもやる気が出ない、あるいは気づいたら一日中ボーっとしてしまっていた、ということが往々にしてある。

 配偶者の死後には、転勤や転職、あるいは新しい趣味を始めることなどで大きく生活のスタイルを変えてその後の生活を送って生活を立て直すという人もいれば、ほとんど何も生活習慣を変えないことで自分の生活を維持していくという人もいる。

 そうはいっても、配偶者の死後にほとんど生活習慣を変えないというのはなかなか難しいかもしれない。特に、これまで家事に一切関わってこなかった人が生活習慣を維持するとなると、これがなかなか大変である。

 もし、「自分は、配偶者を亡くした後、なるべくそれまでと同様の生活習慣を保ちたい」と考えている人がいるなら、配偶者がこなしていた分の家事まで、死別後には自分でできるように日ごろから備えておく必要がある。

■高齢者の“没イチ”にはお互いに「共助」できる環境を

 高齢社会を支える重要な要素に「自助」、「公助」、「共助」の3つがある。しかし、超高齢社会を迎えた今、特に後期高齢者の「自助」はなかなか難しいというのが現実だ。「公助」についても、支えるべき高齢者が増え続け、公的支援だけでは満足なサービスを受けられないということがある。

 そこで必要となってくるのが「共助」だ。かつては親せきや地域社会が「自助」と「公助」の間隙を埋める「共助」の役割を果たしていたが、今では、「他人に迷惑をかけたくない」という意識のもとで「共助」の精神が薄らいできている。こうした状況にあるからこそ、ご近所どうしで「ちょっと近くに来たから立ち寄ってみましたよ、○○さん」というような「共助」の環境を家族や地域でふたたび培っていくべきである、と本書は説いている。

 パートナーを亡くしてからの生活はきっと楽なものではないはずだ。しかし、“備え”があればある程度の“憂い”は軽減できるかもしれない。「没イチ」の生活の仕方だけでなく、実際に「没イチ」になった方の体験談も織り交ぜられている本書で、パートナーとの死別後のご自身の生活を考えてみてはいかがだろうか。

文=ムラカミ ハヤト