『NHKにようこそ!』から17年――滝本竜彦の新作長編小説『ライト・ノベル』に込められたものとは?

文芸・カルチャー

2018/12/2

『ライト・ノベル』(滝本竜彦/KADOKAWA)

 ライトノベル(light novel)――。それは、ざっくり言えば若者向けの“軽い”小説のことを指す言葉だが、万人が納得する定義を説明するのはむずかしい。その特徴は、表紙のイラストや読みやすい文章、中高生の主人公などだろうか。ライトノベルは、一般の文学作品よりも軽く見られがちなところがあり、「読者の願望を満たす、現実逃避のための物語にすぎない」という批判がよくある。確かに、たいした理由もなく主人公が美少女たちに好かれたり、偶然得たスキルによって最強の存在になったり…というような、現実の願望を反映する“都合の良い”展開はある。だが、それだけがライトノベルではない――いちファンとしては、そうした批判に反発したい。

 さて、本稿で紹介する作品は、その名もズバリ『ライト・ノベル』(滝本竜彦/KADOKAWA)という小説だ。あまりにもシンプルかつ大胆なタイトルだから、これだけで内容を想像するのはむずかしい。しかも、著者は乙一、西尾維新、佐藤友哉など「ゼロ世代作家」ムーブメントの中心作家、滝本竜彦氏ときている。『NHKにようこそ!』から17年、既刊最新作『ムーの少年』から7年ぶりとなる待望の新作は、果たしてどんな大作なのだろう…と、おそるおそる読み進めていったが、やはり一筋縄ではいかない作品だった。

 主人公のふみひろは、青春を無為に過ごしている少年だ。そんな彼を見かねたクラス担任は彼に「好きなことで一国一城の主になってみろ」と言い、空き部屋で部活を立ち上げるように命令する。すると、ふみひろの目の前に、突如光のゲートが出現し、ミーニャという猫耳の美少女が現れる。彼女は、闇に光をもたらす存在――エクスプローラーだと名乗るのだが…。いかにも“ライトノベル的”な幕開けから始まる本作は、やがて作者と読者、そして物語を巡るメタフィクションへと変化していく。

“light”には、“軽い”の他にももうひとつ意味がある――それは、“光”だ。著者は、本作『ライト・ノベル』を“光の小説”と位置付けている。それは、読者の願望を満たすだけではなく、読者に自分の人生を変える力、すなわち“光”を与えることができる小説だということだ。それは、筆者が考える、優れたライトノベルが持つ魅力のひとつでもある。タイトルで宣言した作者の試みが成功しているかどうかは、実際にこの小説を体感して確かめてみてほしい。

文=中川 凌