すぐ真似できる、交渉で勝つのは「聞く側」。最も恐れられる弁護士が明かす交渉メソッド

ビジネス

2018/12/3

『交渉の武器 交渉プロフェッショナルの20原則』(ライアン・ゴールドスティン/ダイヤモンド社)

「交渉」という言葉から、どんな情景を想像するだろうか?

 大臣クラスの外交や、企業間の取引など、映画やドラマで見たようになにかとお堅く、スケールが大きなものが多く浮かぶかもしれない。しかし、我々の生活をよく観察してみると、実に膨大な「交渉」を日々経験していることが分かる。

 例えば、趣味の釣り道具を買いたいので、奥さんに小遣いの値上げをお願いする。プライベートの都合でバイトのシフトの融通を図ってもらう。家電量販店で大きな買い物をするのでちょっとした値引きを提案する…。これらは全て立派な「交渉」だ。

 考えれば考えるほど、「交渉」は私たちの人生を大きく左右しているように感じる。そんな人生に密着した「交渉」のスキルを磨くための書籍が『交渉の武器 交渉プロフェッショナルの20原則』(ライアン・ゴールドスティン/ダイヤモンド社)だ。

 本書の著者は、アメリカの法律専門誌で「世界で最も恐れられる4つの法律事務所」に4度も選出された、クイン・エマニュエル・アークハート・サリバン法律事務所の東京オフィス代表。彼が「“これ”だけ押さえておけば負けない」と主張する、交渉の原則をわかりやすくまとめた書籍だ。大きな交渉を手掛けてきた著者の説くメソッドだが、我々の日常生活に応用するためのコツとともに紹介されている。

■感情に呑み込まれない。むしろ、相手の感情を探って利用する

 交渉は、紛れもない真剣勝負だ。しかし、感情的になって勝ち負けにこだわってしまうと、上手くいかない。このカラクリをどうやって把握し、交渉に挑めばよいのだろうか。本書から伺えるのは、「勝敗という概念をどの領域で捉えるか」が重要だということだ。

 例えば、あなたが「賠償」を求められた場合。ここで冷静に考えたいのは、もしかすると相手は、「非を認めて、ちゃんと謝ってほしい」という感情を持っているのかもしれないという点だ。相手のこの感情を上手く利用することができれば、こちら側の賠償は大幅に少なくできるケースもあるのだそう。

 場合や立場にもよるが、「誠意ある謝罪」によって賠償を免れることができれば、こちらとしては願ったりではないだろうか。感情に身を任せてしまうと、「謝罪=負け」と捉えてしまうかもしれないが、「最善の落としどころ」を客観的で冷静に見つけようとすれば、結果としての「勝ち」を獲得することができると言えよう。

■「話す者」より「聞く者」が勝つ。その方法は?

 交渉の場面では、相手に自分の主張を分からせようと、「話す」ことに集中してしまいがちだ。しかし著者は、「聞く」ことこそが勝敗のポイントにつながると説く。相手の目的、相手が絶対に譲れないもの、相手の恐れていること、相手が困っていること…。そうやって相手の頭の中に何があるのかを考え、熟知した者こそが、交渉では優位に立てるのだ。

 では、自分よりお喋りな相手と向き合いながら、どのようにすれば主導権を握れるのだろうか。その策が「質問」なのだという。

「質問」をすれば、相手はそれに答えざるを得ない。もしも相手が答えるのを断ったり、ごまかしたりした場合には、それが相手の「弱点」なのだとわかる。(本書112頁)

 そうして「質問」をしながら主導権を握り続けるうちに、相手の真意や状況の核心に迫ることができる。ただし、決して「詰問」になってはいけない。「私はあなたとともに問題解決がしたい」というスタンスを示すべきだという。

 本書から分かるのは、「交渉」とは「ケンカ」ではないというシンプルな点だ。相手を打ち負かそうという気持ちに走ってしまうと、仮に一時的に満足できたとしても、最終的には不採算を被ってしまう可能性は高いのだ。

「最善の落としどころ」を冷静に見極めることで、日常に転がる実にさまざまな問題がどれも気持ちよく解決できるようになるのではないだろうか。

文=K(稲)