大人になるほど友達作りは難しい! だから心に響く「ズッコケ三人組」――アンソロジー5つの物語のポイント

文芸・カルチャー

2018/12/16

『そしてぼくらは仲間になった』(ポプラ社)

 仲間、というのは友達よりも純度の高い関係である気がする。友達がすなわち仲間であることは多いが、仲間は必ずしも友達である必要はない。相手のことが気に喰わなくても、腹の内が読めなくても、好き嫌いの感情を越えて仲間になることはできる。繋げるのは、信頼感だ。その絆はときに友達よりも強く、親友という言葉よりも重い。『そしてぼくらは仲間になった』(ポプラ社)の瑞々しさが児童書であっても大人たちの心を打つのは、歳をとるにつれて簡単には新しい友達をつくれなくなっていくからだ。だけど仲間はつくれる。プライベートのことは何も知らないけど、仕事をするときのあいつは誰よりも知っている。誰よりも信じられる。限定的なその関係の尊さを、大人たちも知っている。

 本書は「ズッコケ三人組」シリーズ40周年記念企画として刊行された、小学5年生の三人組を描いた5つの短編を収録したアンソロジーだ。解説はもちろん、「ズッコケ三人組」の那須正幹氏。

ある人が「ズッコケ三人組」はジャンケンのグー、チョキ、パーと同様、それぞれ欠点もあるし長所もあり、三人そろったとき初めて力が発揮できると、分析しておられました

 と綴っているが、関係に上下がなくもちつもたれつなのが三人組のいいところだ。それぞれ突出した個性を生かして、ハチベエとハカセ、モーちゃんがいくつもの大冒険を乗り越えてきたように、本書の三人組もみな、ひとりでは解決できない事件に立ち向かい、思いもよらぬ成果を得る。

イラスト みずす

 個人的には1話目に収録された「夏のはぐれもの」(小嶋陽太郎)が好きだった。あだ名でその風貌が想像できるふとまき君と、これまた名前だけでかわいいのがわかるむすびちゃん。夏祭りでたまたま出会った2人と合流し、「米同士でデートか?(太巻きとおむすびだから)」とからかう住吉くん。この3人はクラスメートではあるけれど、ふだんからつるむ友達ではない。むすびちゃんはふとまき君が気になっているようだが、ケケケと“下等な悪魔のように”笑う住吉くんは敬遠されやすい男の子だ。そんな3人が夏祭りの夜、「エウエウ」しか話さない幼い迷子とすりに出会ったことで仲間となる。二度とこんな夜はないかもしれない。だけど3人で奮闘した記憶は、3人にとってたぶん、仲のいい友達との思い出よりも特別になる。

 なぜか土だらけで登校するクラスメートの女子の秘密を、保健係と美化係の男子2人が共有する「ブリリアントなサルビアを」(高森美由紀)。ゲーム世界で出会った顔の見えない仲間と現実世界で出会う「ドラゴン退治はスニーカーで!」(福島直浩)。女子特有のグループ感から脱する自由な関係性を描いた「生きもの仲間」(虹山つるみ)。VRの世界を生きるキャラクターとの絆を育む「子どもでも大人でも、男でも女でもない」(向井湘吾)。それぞれに瑞々しく、どこか切なく、読む人によって響く作品は異なるはずだ。5人の作者があげているお気に入りのズッコケシリーズを見てから、好みのあいそうな作品を読んでみるのも楽しいかもしれない。いずれにせよ、胸が熱くなること間違いなしだ。

文=立花もも