大泉洋主演『こんな夜更けにバナナかよ』――身体は不自由、心は自由! ワガママ男の笑えて泣ける感動実話

文芸・カルチャー

2018/12/28

『こんな夜更けにバナナかよ 筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち』(渡辺一史/文春文庫)

 2018年12月28日、大泉洋の主演映画が公開される。その名も「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」。不思議なタイトルだが、一体どのような作品なのだろうか。Twitterでも多くの人がこの映画に注目しているのがわかる。

「こんな夜更けにバナナかよ」って映画めちゃ観たい。年末年始いつか観に行こっと」

こんな夜更けにバナナかよ、いま映画化?!ってすごいビックリしたけど、原作とても良かったから気になる!

こんな夜更けにバナナかよ、原作読み終わった!映画見に行く準備が整ったよー

 映画の原作となったのは、大宅賞、講談社ノンフィクション賞を受賞した本格ノンフィクション『こんな夜更けにバナナかよ 筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち』(渡辺一史/文春文庫) 。舞台は北海道札幌市。描かれるのは、全身の筋肉が徐々に衰えていく難病・筋ジストロフィーに冒された鹿野靖明と、彼を支えるボランティアたちの姿だ。難病を描いた作品というと、闘病者の頑張りを健常者という上からの視点で不自然なほど賞賛し、読む者に感動を強いるような作品も少なくない。だが、この作品はまったく違う。鹿野とボランティアの平等な関係、ともに支え合い、互いに全力でエゴをぶつけあう姿に圧倒させられる。

 読書メーターユーザーたちはこの作品にこんな感想を寄せる。

体が不自由だからって心まで不自由にしなくていい。障害者だからここまで、という壁を全力でぶち壊す。人は一人で生きているわけじゃなし、できないことはとことん頼って迷惑かけていいんだ。タイトルのくだりのシーンは吹いた。(ウメ)

この本は、教科書に載せて欲しいなあ。子供にぜひ読ませたい‼ 生きるってなにか?すごく考えさせられる。特に本の中にも書いてあるように日本人は人に迷惑をかけないことが美徳とされてるから。極端なことを言うと迷惑をかけるくらいなら…この呪縛から抜けられない限り、日本人の自殺率は減らないのでは。障害者殺人もなくならないのではないか、と思う。お互いに迷惑掛け合おうよ。という新しい一歩をふみだしたからこその鹿野さんとボランティアの成長だと思う。にんげんってそんなにきれいに生きられないのだから。(まいこ)

第三者視点から描かれており、両者の感情、葛藤が綺麗事なく苦く伝わってくる。鹿野は障害者という介助される立場でありながら、自らの身体を使って介助を教え、また、人間らしく生きる為の「ワガママ」を突き通して嵐のように人生を全うしようとする。そんな鹿野が実は多くの人を救っていたことが終盤に。筋ジスをはじめとした重度障害が【生まれながら多くの他人と一生関わる運命を背負う】という現実を知れる心に響いた良書。(megmonta)

自分が年を取って色々な身体の機能を失ったときに自分を蔑んだり価値がないと嘆いたりする必要は全くない。その時々に関わる人と色々会話し行動して人生を謳歌すべき。生きるのに24時間介護が必要だった鹿野氏は最後まで自分を生きたし関わる人たちに生きる意味を与えてた。多少回りに迷惑をかけて生きたっていいんだよ。(Miko)

障害者の多くが抱えているであろう「自分がいることで負担を掛けている」という負い目を、まるっと逆手にとることで 生きることに誰よりも、貪欲に挑んだ鹿野さんと、彼と真っ向から関わり、赤裸々にぶつかりあったボランティアの人々。重度障害を持ち、誰かの手を借りなければ生きられない鹿野さんにとって、我がままなほどの自己主張はそのまんま、多くの他の障害者が口に出せずに飲み込んでいる不満に他ならないのだろう。本来であれば、社会の中で当たり前に存在し共存することが理想なのだ。(月ママ)

『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』(渡辺一史:原案、橋本裕志:脚本/文春文庫)

 原作では鹿野を中心に、鹿野を支えることで彼に勇気づけられていくたくさんのボランティアの姿を描いているが、この原作を元に、映画では、特に鹿野に影響を受ける2人の男女の葛藤と成長を描き出している。そのノベライズ版『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』(渡辺一史:原案、橋本裕志:脚本/文春文庫)は読むだけで思わず笑えて気づいたら泣いてしまう心揺さぶる作品だ。

 医大生の田中久は、ボランティアとして、いつも鹿野に振り回される毎日を送っていた。ある日、田中の浮気を疑って鹿野宅に突撃してきた田中の恋人・安堂美咲は鹿野に新人ボラに勘違いされてしまう。おまけに鹿野は美咲に一目惚れしてしまい、田中は彼の代わりに愛の告白まで頼まれる始末…! 最初は戸惑う美咲だが、次第に鹿野のまっすぐな姿に心を許し、夢を追うことの大切さに気付かされていく。

 身体が不自由だからって、心まで不自由にする必要はない。自分のことを自分でできなくとも、自由に生きることはできるはずだ。大泉洋演じる鹿野は、ワガママで、ずうずうしくて、ほれっぽくて、大のおしゃべり好き。不自由な身体だが、自由に生きようと試行錯誤し、病院での制限された暮らしから逃れ、自ら集めたボランティアに支えられて自宅暮らしをしている。バナナが食べたくなったら、たとえ真夜中でも我慢しない。好きな時に好きなものを食べ、好きな時間に眠り、行きたいところに連れて行ってもらう。それはワガママに見えるかもしれないが、人間としての当たり前の自由を貫くことがそんなにいけないことなのか。“病院で、天井を見つめてただ生きているだけなんて、意味がない”彼のワガママは命がけのワガママなのだ。

 まっすぐな鹿野と、彼と全力で向き合うボランティアの姿を俳優陣はどのように演じるのだろうか。原作本やノベライズ本もさることながら、映画も気になって仕方がない。正直に生きることの素晴らしさを、命がけのワガママを通して教えてくれる鹿野の物語は、きっとあなたの心も震わせる。生きたい人生を生きるため、懸命に戦い抜いた男の物語に、ぜひあなたも触れてみてほしい。

文=アサトーミナミ