自虐じゃない「ブス」論! あきらめた言い訳をブスのせいにしないためには?

ビジネス

公開日:2019/1/13

『ブスのマーケティング戦略』(田村麻美/文響社)

人間の価値が見た目だけでないのは、百も承知である。しかし見た目が相当重要なファクターであることは事実だ。

 こう述べて、「ブスの幸せな結婚とブスの経済的な自立」の方法を、実体験をもとに指南した1冊が『ブスのマーケティング戦略』(田村麻美/文響社)である。著者の田村麻美氏は「足立区の気さくな女性税理士」として活躍中。笑顔の大アップという目を引く表紙の女性が田村氏本人である。

■ブスの基準を考え直してみよう…見た目は自分の“パッケージ”

 本書は田村氏が、結婚と仕事を獲得するまでの人生で学んだ戦略を、具体的な行動提案として記したものだ。しかしチャーミングな笑顔の著者は「ブス」なのだろうか? 田村氏の考えるブスの基準は、美醜そのものではなく、「顔面を武器にできない人」なのだそうだ。

 小学生時代に「自分がブスだと気づいた」著者が、中学生になったときの最大の関心事は、どうすれば彼ができるかということ。イケメンと付き合える可能性がないなら優秀な男と出会いたい、と勉強に励んだおかげで、「偏差値の高いブス」となり、ただのブスではなくなったことで自己像も大きく変わったという。

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 自分を商品と考えたとき、見た目はそのパッケージにあたる。田村氏は、客観的な実績を得て商品価値を上げ、自分に自信をつけたのだ。

 高校時代もとにかく勉強に励む。その理由は、結婚も見据えて、「頭脳レべルの高いブサイク」と付き合うことを目標に定めたからだ。自分が勝負する市場はどんな特徴があるのか? ここでは、マーケティングにおけるセグメンテーションを戦略化していく。

■合コンの繰り返しは、経営学でいう“PDCA”と同じ

 大学生になった田村氏は、サークル内に彼氏をゲットし願望を達成! だがその後ふられてしまったことで、今度は合コンに目覚める。「合コンは店頭である。商品は店に出してこそ真価がわかる。自分という商品を売るために、いかに改良し、いかに見せるか」と述べ、合コンで「PDCA(計画、実行、確認、改善)」を回し、それをもとにマーケティング戦略を立て直すことを繰り返し、100回余りの合コンを重ねたそうだ。

 だからこそ、結果的に合コンで“運命の人”をキャッチできたのだ。自分から相手をデートに誘い、同棲を経て、自分からプロポーズし、ついに結婚(私という商品と彼のニーズとの完全一致)に至る。その際にもし断られたとしても、「手に職がある」ということは結婚できなくても大丈夫という“心の余裕”を生んだと述べる。

■幸せな結婚や仕事の成功は“ニーズの合致”である

 妊娠を機に、北千住に事務所を構え「足立区の気さくな女性税理士」をタイトルにしたインパクトのあるホームページをつくった田村氏。エリアマーケティング、ニッチ戦略などが実を結んで成功し、たくさんの顧客がついた。

 人が成功する理由は、皆が認めるような外見とは関係ない。だが、ブスにとっての肩書は重要だ。ホームページを見てきてくれた人は「この顔でいい」「この顔がいい」と選んでくれたのだ。

 ブスの起業はすがすがしいと述べる。合コンで培った「傾聴」も仕事にいかされているそうだ。田村氏は今、仕事と夫、娘もいて「本当に幸せ」と書中でも連呼する。最終章の、経年劣化した美人の人生とブスの人生の考察比較は、ぜひ美人も参考にしてほしい。

 田村氏の成功すごろくとともに、3C分析、ブルーオーシャン戦略、起業家が参考にするリーンスタートアップ理論など、いわゆる「マーケティング理論」をわかりやすく学べる実用書でもある1冊だ。

文=泉ゆりこ