「なぜ私ばかりがひどい目にあうの?」と悩む原因を考える。本当の自分を探すためのアドバイス

暮らし

公開日:2019/2/3

『なぜあなたばかりつらい目にあうのか?』(加藤諦三/朝日新聞出版)

“あなたは見知らぬ人に何かを相談しているか? もしそうなら(もし相談しないなら)周囲の人が皆嫌いと思った方がよいかもしれない”

 そう言うのは、長年にわたりラジオでリスナーから人生相談を受けている加藤諦三氏。彼の著書『なぜあなたばかりつらい目にあうのか?』(朝日新聞出版)では、続けてこう語る。

“あなたに深刻なトラブルがいつも起きていれば、周囲の人が嫌いと思った方がよい。相手が嫌いということは、自分を嫌いということである”

 周囲の人のことが嫌い、自分のことも嫌い。――普段そんなことは考えたこともなかったが、こう自信を持って断言されると、自己を分析せざるを得なくなってくる。さらに読んでいくと加藤氏は、トラブルの原因は他人ではなく、トラブルを抱えている本人にある、と畳み掛ける。

 どういうことかというと、「自分は悪くないのに他人のせいでトラブルが起きた」と思っている人は、いつまでたっても悩みや問題を解決できない、というわけだ。加藤氏は「他人のせいで自分が不幸」という考え方を、被害者意識と呼び、この意識の源は育った親子関係にあるという。

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■うまくいかないのは他人のせい、と思う背景にあるのは…

 この「親子関係と被害者意識」、そこから生まれる「皆嫌い、私も嫌い」の仕組みをかいつまんでまとめると、次のようになる。

 成長過程で親からありのままの自分を愛してもらえなかったから、他人から好かれたいと思うようになる。そして、人はこの自分なら好かれるに違いないと考える自分の理想像になって、仕事や人付き合いを行う。だがその時に本来の自分を抑え、あるいは本来の自分を「犠牲」にしているので、被害者意識が生まれるというのだ。

 加えて、他人という存在は、本来の自分を傷つける安心できないもの、という価値観が出来上がる。皆は心を許せない存在、だから嫌い! となる。また、本来の自分を抑えているということは、自分で自分の本心を痛めつけていることになり、自分で自分を嫌うことにつながるという解釈だ。

 この詳細は、ぜひ本書の文章をお読み頂きたいが、ポイントはちょっと冷静になって見直してみよう、という点だろうか。「私はこんなに頑張っているのに」は、見方によっては、ありがた迷惑かもしれない。勝手に被害者になっているのは自分。他人は自分が理想とする自分を求めてなんかいない。そもそも、みんなに好かれなくてもいい、いい子でなくても何の問題もない。こういった事実にまずは気付きなさい、というのだ。

■本当の自分を見つめ直すのは難しいことだが――

 そのうえで、本書が説く幸せへの近道は、「自分自身であろうと努力すること」だ。自分自身であるというのは抽象的な表現だが、つまりは、他人によく思われるために行動するのではなく、自分のために行動しなさい、そうすれば、自分で自分の本心を尊重するのだから、イコール自分を好いていることになる。そして、自分で責任を取って行動したのであれば、他人に責任を押し付けることもなく余計な期待もしなくなる。そうすると、他人のことも好きになれるという仕組みらしい。

 正論すぎてぐうの音も出ない。しかし、人生に迷っている人がすぐにこれを実行に移すことは難しいかもしれない。本書は安易な慰めや癒しでなく、自分を支える理論を求める人向けの1冊だ。そして、著者の加藤氏が悩んでいる人を助けたいと思っているその気持ちは、優しい真実だ。

文=奥みんす