井上芳雄主演で舞台化決定! 94万部突破のベストセラー『十二番目の天使』が読み継がれる理由とは?

文芸・カルチャー

公開日:2019/2/10

『十二番目の天使』(オグ・マンディーノ:著、坂本貢一:訳/求龍堂)

 思いもよらぬ理不尽や悲劇が身にふりかかったとき、「自分の何が悪かったのだろう」と責める人は多い。それは幸運に恵まれたときの「日頃の行いがいいからだ」という精神の裏がえしなのだが、実際、幸も不幸も一人の心がけで呼び寄せられるものではない。様々な人生が折り重なって、渦潮のように発生した運命の流れに巻き込まれた結果であることが大半だ。

 だが、だからこそ、立ち直ることができない。なぜこんな目に遭わなくてはいけないのか、人はどうすれば絶望から人はどうすれば浮かび上がることができるのだろう……。それを教えてくれるのが『十二番目の天使』(オグ・マンディーノ:著、坂本貢一:訳/求龍堂)。3月に井上芳雄主演で舞台化されることの決まった本作は、2001年の刊行以来読み継がれ、94万部を突破しているベストセラー小説である。

 ビジネスで大成功をおさめた主人公のジョン・ハーディングは、愛する妻と息子に恵まれ、帰ってきた地元では英雄としてもてはやされる成功者。だが突然の事故で妻子を失い、絶望のあまり自ら命を絶つことさえ考える。そんなとき、親友のビルにむりやり連れ出され、リトルリーグの監督をつとめることになるのだが、そこで出会ったのが十二番目の天使――11歳の少年・ティモシーだった。

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 十二番目、というのは、12人のチームメンバーを決める場で、ティモシーが最後に選ばれたからだ。ひときわ身体が小さく運動神経も悪いティモシーはいわゆるチームの味噌っかす。だが息子・リックの面影をみたジョンは、彼に個人指導をもちかけ交流をもつようになる。そして触れるのだ。ティモシーの小さな体にみちみちている希望の光に。

〈毎日、毎日、あらゆる面で、僕はどんどん良くなっている!〉と口癖のようにティモシーは言う。女手ひとつで育てられ、裕福とは対極の境遇で、決して恵まれているとはいえない彼は、けれど何事も決してあきらめない。生来底抜けにポジティブだから、ではなくて、繰り返しそのフレーズを口にすることで自己暗示をかけているからだ。それは絶望に落とされる前、ジョン自身が努力するため己に課していたことでもあった。むりやりにでも前に進む。どんな厳しい状況でも常に好転する未来へ向かえるように、自分が〈良くなっている〉と信じ続ける。何もかも足りていない、完璧にはほど遠い自分を知っているからこそ、その言葉を基礎に意地を張る。それはジョンの忘れかけていた、明日を信じる力だった。

 ティモシーの言葉はチームにも希望を与え、活気づかせていく。たとえ他人と比べて能力が低いように見えても、その人にしか果たすことのできない役割があると、本作は教えてくれる。

〈自分を哀れに思うことは、もうやめにする〉と、ジョンは言う。ティモシーに出会い、自分を支えてくれる人たちの言葉に触れ、ようやく前を向くのだ。ラストで明かされるティモシーの秘密に、再び絶望に似た感情を味わうが、それでも二度と現実から目を背けたりはしない。そんな2人の姿に、読者もまた心を再生し明日への力を手に入れる――そんな優しくて強い希望に満ちた小説なのである。

文=立花もも

舞台『十二番目の天使』

キャスト
ジョン:井上芳雄
ティモシーの母ペギー/サリー:栗山千明
ビル:六角精児
ローズ/ジョンの母:木野花
メッセンジャー医師/ジョンの父:辻萬長
ティモシー/リック:大西統眞/溝口元太(Wキャスト)
トッド:城野立樹/吉田陽登(Wキャスト)

スタッフ
原作:オグ・マンディーノ
翻訳:坂本貢一(求龍堂刊「十二番目の天使」より)
台本:笹部博司
演出:鵜山仁

公演情報
公演場所:日比谷シアタークリエ
公演期間:2019年3月16日(土)~4月4日(木)

地方公演
・新潟公演(りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館劇場)4月6日・7日
・石川公演(北國新聞赤羽ホール)4月9日・10日
・茨城公演(水戸芸術館ACM劇場)4月13日・14日
・香川公演(レクザムホール(香川県県民ホール)大ホール)4月17日
・福岡公演(久留米シティプラザ ザ・グランドホール)4月19日
・福井公演(越前市文化センター)4月21日
・愛知公演(日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール)4月24日
・兵庫公演(兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール)4月26日~29日

舞台『十二番目の天使』公式サイト