昆虫食は「プチジビエ」!? エビ、トロ、ウナギ…を思わせる新しいグルメの世界

スポーツ・科学

2019/2/23

『昆虫は美味い!』(内山昭一/新潮社)

 目を閉じたまま食べ物を口に運ぶ様子を、イメージしていただきたい。口の中に広がる味は、エビ、マグロのトロ、ウナギ…。ああ、想像だけでよだれが出てくる。

 しかし、瞼を開いた時、皿の上に載っているのが、バッタ、カミキリムシの幼虫、ハチの子だったとしたら――。

 そんなシチュエーションを思い浮かべてしまいそうなのが、本書『昆虫は美味い!』(内山昭一/新潮社)だ。自分にゲテモノ趣味はないよ、と渋い顔で見送ってしまうにはあまりにも惜しい、興味深い本である。

■昆虫食は普通の食べ物?

 そもそも昆虫食は、ゲテモノとは言い切れない。人類は誕生した700万年前から貴重なタンパク源である昆虫を食べ続けてきた事実があり、現在でも世界中で、日常的に2000種類近くの昆虫が食べられているという。もちろん日本でも、地域によっては普通にイナゴやハチの子などを食べているのはご存じだろう。

 まずは、偏見にとらわれず本書のページをめくってみてほしい。あなたの知らなかった新たな味との出会いが待っているはずだ。

■「プチジビエ」料理の数々をひもといてみると――

 本書の前半部分では、昆虫を食べ続けて20年の著者が言うところの「プチジビエ=昆虫食」が次々に紹介されていく。どの形態(幼虫、成虫など)の、どの部位が美味しいか、どのように調理するかといった知見が詰まった食レポ、怒涛の26連発だ。

 たとえばハチの子の味は、ウナギに近いとされており、試食者のアンケートによるとウナギよりもうま味が濃厚だそうだ。栄養食品としても優れており、土用の丑の日にはうな重もよいがハチの子飯はいかがかと著者は勧めている…。

 また、カミキリムシの幼虫は「特別な高級食材」クラスで、「クリーミーでほんのり甘く、濃厚な脂のコクとうま味があり」「脂ののったトロを思わせる」という。なんだかものすごく美味しそうではないか。

 他にも、バッタはエビの味、カメムシはパクチーの香り、アメンボは甘い(アメンボの「アメ」の由来は、雨ではなく飴とのこと)、サクラケムシ(桜の木につく毛虫)の糞のお茶は上品な桜の香り、などなど…。食欲をそそる(?)巧みな表現と相まって、読んでいるうちにだんだんと高級なグルメ本のようにも思えてくる。

 ただし、昆虫の王様として子どもから大人まで人気の高いカブトムシは、幼虫も成虫も、腐葉土臭くて不味いそうだ。著者が代表を務める「昆虫料理研究会」で、採取した虫をその場で食べるイベントでも、キャッチ・アンド・リリースする(食べることなくその場で放してしまう)数少ない虫だそうだ。

 なお、多くの方が苦手だと思われるあの「ゴ」のつく虫も登場してくるが、どうやら美味しいらしい…。

■未来の食卓には昆虫が並ぶ?

 そして本書の後半では、昆虫食の歴史や現状、未来――食糧難を解決する切り札として、昆虫食が注目されていることなどが紹介される。

 家畜にくらべて飼育の効率がよく、温室効果ガスの放出量も少ないなど、昆虫食のメリットは計り知れないという。栄養価が高く持続可能な食料として、家畜に代えて昆虫を利用することが急務であると国連食糧農業機関(FAO)は提言しており、各メディアからの注目も集まりつつある。

 これからの時代、昆虫食が、人類の危機を救うことになるかもしれない。いずれは、それがありふれた食卓の風景になる可能性も高そうだ。そうだとすれば、その未来にいち早く適応するためにも本書は有用だ。

 最後に、本書を読む上での注意点。精密でどことなく可愛らしい虫のイラストが随所にちりばめられているのだが、絵なら安心と思って油断していると突然、栗ご飯ならぬ「クリムシご飯」の写真が出てきたりする。ページをめくる時には気をつけてほしい。

 ちなみに、クリムシは本当に栗の味がするそうだ。

文=齋藤詠月