「上司がバカ」を理由に転職するのは正解? 幸せな社会人生活を送るための「バカ上司の取扱説明書」

ビジネス

2019/3/2

『バカ上司の取扱説明書』(古川裕倫/SBクリエイティブ)

「バカ上司」という言葉から、具体的な顔が浮かんだそこのあなた、心中お察しします。そして「誰の顔も浮かばない。私は恵まれているのだな」と感じたあなた、幸運ですね…。

 でも、この先どうなるかはわかりません。本稿では、どちらの方にも読んで頂きたい『バカ上司の取扱説明書』(古川裕倫/SBクリエイティブ)を紹介します。著者は、商社勤務や芸能プロダクションの取締役を経て、現在は全国で人材育成に関する研修指導を行っている、いわば人材育成のプロ。本書は、「ひどい上司」とはどういうものかを理解した上で、その対処法を学び、ひいては長い社会人生活を生き抜くためにやるべきことも習得できるという1冊です。

■ひどい上司は3タイプ。それぞれ異なる対応策は――

 本書では、「ひどい上司」を以下の3タイプに分類しています。

(1)「イヤな上司」
威張る、怒りっぽい、暗いなど、主に「性格」の問題を抱える上司

(2)「ダメ上司」
決断力がない、記憶力に乏しいというような、業務遂行の「能力」における問題を抱える上司

3)「バカ上司」
責任を取らない、部下の話や提言を聞こうとしないなどという、仕事への「姿勢」で問題を抱える上司

 このうち、(1)「イヤな上司」と(2)「ダメ上司」は、工夫やある程度の我慢をすることでうまく乗り切ることが可能なのだとか。「イヤな上司」であっても、仕事ができないわけではないこともあるし、「ダメ上司」であっても、人間的には優れているケースもあるからです。

 最も厄介なのは、本書のタイトルにもある(3)「バカ上司」。本書では、このタイプの事例として、「部下には無関心で上だけ見ている、ゴマスリ上司」「指示がコロコロ変わる上司」「重箱の隅をつつく上司」などを数々挙げた上で、それぞれ必要な具体的対策が述べられています。

 また、見逃せないのは、ひどい上司に向けた前向きなアドバイスも寄せられていること。これは現役の「ひどい上

司」に対しては処方箋になるし、これから将来上司の立場になるという人には、「未来のひどい上司」にならないための心強い指南書になるでしょう。

■バカ上司を避けるために転職するのは正解?

 本書では、「ひどい上司への対策」という、短期的な対処法のアドバイスだけでなく、「得をするための部下の心得」「攻撃されないように信頼を築く」「どうしても戦わないといけない時の心得」「会社人人生を楽しむ方法」といった、社会人としての中長期的な視野に立った対処法についても数々のノウハウが盛り込まれている点が特徴的です。これらを頭に入れ、実行することができれば、ひとつの会社に長く勤めても、あるいは転職しても、どんな場所でも通用する人材となれるでしょう。

 本書全体を通して著者が述べるのは、「ひどい上司が原因で、会社を辞めるのは止めたほうがいい」ということです。なぜならば、ひどい上司を避けるために会社を辞め転職したとしても、次の会社にもひどい上司がいる可能性は高いからだといいます。そうするよりも、「ひどい上司対策」を身につけ、それに負けず自分自身を高めていく方が、長い目で見れば得策ではないでしょうか。

 最近では大卒新人の3割が3年以内に会社を辞めるといいます。辞める理由はさまざまでしょうが、それが人間関係、特に上司との関係にあるとすれば、実にもったいない話です。

 サン・テグジュペリはこんな言葉を残しています。

“職業というものの尊さは何よりもまず、人と人を結びつけることにある。この世に本当の贅沢は一つしかない。人間の関係という贅沢がそれだ”

 一度しかない人生の中で大きな割合を占めるであろう「仕事人生=人と関わる人生」をより実りあるものにしていくために、本書のヒントを参考にしてはどうでしょう。

文=水野さちえ